中国最高裁判所が5月31日、インターネットにかかわる十大典型判例を発表した。同裁判所の民事第三廷の林広海裁判長は、裁判所は判決を通じて不正クリックによる信用詐欺、名義の盗用、「ポイ活(ポイントを貯めたり使ったりする活動)」詐欺などインターネットのダークサイド及び信義則違反行為を厳罰したと語った。
林広海裁判長によると、2018年から北京、杭州、広州にある三つのインターネット裁判所は各種のインターネットにかかわる一審案件21万7256件を新規に受理し、20万8920件の裁判を終了した。年別では、2018年は1万5327件を新規に受理し、1万2792件の裁判を終了した。2019年は10万4714件を新規に受理し、9万9405件の裁判を終了した。2020年は9万7215件を新規に受理し、9万6723件の裁判を終了した。またほかの裁判所も大量のインターネットにかかわる案件を審理した。
「全体的に見ると、インターネットにかかわる案件は年々増加し、法律関連の問題が新しいタイプで、複雑かつ難解なものとなり、裁判所が直面する新たなチャレンジや困難は益々増大している。」林広海裁判長はこのように語り、デジタル経済のイノベーションと発展を奨励するため、裁判所は判決を通じてデータ所有権などの新しいタイプの知的財産権の保護範囲と権利侵害認定基準を徐々に明確にしていると述べた。
その他、林広海裁判長は今回発表されたインターネットにかかわる十大典型判例の特徴について、以下のとおり紹介した。一、これらの典型判例はインターネット分野によくある知的財産権侵害案件、不正競争案件、契約係争案件、著作権侵害犯罪などを含み広範囲に及んでいる。二、法的問題は、ブロックチェーンの証拠収集、ダークサイドに対する規制、インターネットの仮想財産の保護などのような最先端なものなど、いずれも関係分野の最初の係争となる案件が多数ある。三、司法の方向性が明確であり、インターネットに対する司法規制を強化するシグナルを示している。
十大典型判例はインターネット経済の健全で秩序ある発展の保障に対する裁判所の模索を明らかにしている。例えば、「常文韜氏と許鈴氏、第三者・馬鋒剛氏のインターネットサービス契約係争案件」で、裁判所は、その契約は「不正クリックによってトラフィック量を増大させること」を目的とした闇取引と認定し、公序良俗に反し、公共の利益を損なったとして、無効と判断した。ネットワークの全うな秩序の構築、情報モラルの環境の浄化、ガバナンス機能の向上に大きな意義を持つものである。
コメント
2020年12月現在で、中国のネットユーザー数が9.89億人、インターネット普及率は70.4%に達している。インターネットの普及により、社会資源の配分の効率が上げられ、技術や産業の発展、情報伝播が促進されると同時に、権利侵害行為も発生しやい。中国最高裁判所が発表したインターネットにかかわる典型判例は著作権侵害案件(計4件、うち1件は刑事案件)、インターネットサービス契約係争案件(計2件、うち1件はインターネットの仮想財産の保護にかかわる案件)、不正競争案件(計4件、うち1件は商業毀損案件)と三つの種類が含まれた。こうした状況からわかるように、インターネット分野の紛争は知的財産権において顕著であり、特に著作権や不正競争での権利侵害が頻発している。これらの典型判例は「通知-削除」ルールの適用、ブロックチェーンの証拠収集、インターネットの仮想財産の保護、ソフトウェアの組み込みなどのインターネット分野の典型的又は最先端の問題にかかわっている。