ビデオゲームのタイトルは、ゲーム開発者にとって最も価値のある資産の一つと言えるだろう。ゲームタイトルを商標登録することで、そのタイトルに対する独占的な権利が確保され、第三者がそのタイトルをゲームや関連商品・サービスに使用することを防ぐことができる。
しかし、ゲームタイトルがコンピュータゲームの内容を説明しているかどうか、商標登録の審査で繰り返し出てくる問題である。現在の実務では、タイ知的財産局(DIP)の商標登録官と商標委員会は、ゲームタイトルがゲームの特徴などに関係なく、ゲームタイトルはコンピュータゲームを説明するものとみなしている。
最近の事例では、あるモバイルゲーム開発会社が、ビデオゲームタイトルの商標登録を拒絶されたことに異議を唱えた。多くの人気モバイルゲームを世界市場に送り出しているこの開発者は、自社のモバイルゲーム「Clash Royale」のタイトルについて、コンピュータゲームソフトウェア(第9類)と電子ゲーム機(第28類)を指定して商標出願を行ったが、商標登録官と商標委員会によって識別力がないことを理由に登録を拒絶された。
商標登録官と商標委員会は、「Clash Royale」という言葉は、「battle of the kings」を意味すると解釈できるとし、指定した区分の商品に関連して、これらの言葉は「王の戦いに関連するゲーム」として商品の特徴を表現しているとして、タイの商標法が要求する識別力を有していないため登録できないとの判断を示した。
ゲーム開発会社は、Tilleke & Gibbins法律事務所に依頼し、「Clash Royale」という商標には本質的な識別力があり、商品を直接的に説明したものではないと主張して、商標委員会の決定を不服として知的財産・国際取引裁判所(The Intellectual Property and International Trade Court:IP&IT 裁判所)に上訴した。
ゲームタイトルの識別力を審理したIP&IT 裁判所は、登録官や商標委員会とは異なる見解を示した。裁判所は、この商標は登録に必要な識別力があると判断し、「Clash Royale」はゲームを説明したものではなく、単に暗示的な商標であるとした。消費者は、更なる想像力を働かせなければ、「Clash Royale」という商標とコンピュータゲームの関連性をすぐに理解することはできないとの認識を示した。
IP&IT 裁判所の判決は、ゲームタイトルとして使用される場合の暗示的商標と記述的商標の違いについて、確固たる理由を示しており、ゲームの内容や特徴を説明するタイトル(アクションゲーム、ロールプレイングゲーム(RPG)、アドベンチャーゲーム、シミュレーションゲームなど)の例を示した。
ただし、IP&IT 裁判所の今回の判決は、DIPにより控訴される可能性があるため、まだ確定していない。しかしながら、本判決は、今後を期待できる進展であり、最終的な結果によっては、タイにおけるゲームタイトルの商標登録を検討する際の基準が変更される可能性もある。
本文は こちら (Promising Courtroom Win for Trademarking Video Game Titles in Thailand)