2021年7月2日、プーチン大統領は「エチルアルコール及びアルコール製品の製造と流通、アルコール製品の消費(飲酒)の抑制の国家規制に関する連邦法の改正」に関する法律No.345-Ф3に署名した。この法律は、1995年11月の基本法No.171-Ф3の条文の文言を変更し、いくつかの条文や文字を削除した。特に、「スパークリングワイン」に関する多くの条文から、「シャンパン(ロシア語のshampanskoye)」という文字を削除している。
翌日、ロシアのメディアは、「プーチン大統領はシャンパンがロシア人だけのものとなる法律に署名した」、「プーチン大統領が署名した改正法はフランスのシャンパンを禁止する可能性がある」、「プーチン大統領はフランスにシャンパンの使用を禁止」等々、衝撃的なニュースを配信した。
ある記事は、プーチン大統領がフランスのシャンパーニュ地方のスパークリングワインを、シャンパンの名称でロシアに輸入することを禁じる条例に署名したとし、また、今後は単に「スパークリングワイン」と表示しなければならず、条例では、ロシアで生産されたワインにのみ「シャンパン」という名称を使用できると説明している。
この新しい規則に関する記事で条文を引用しているものはない。実際、ロシアは時に愚かな法律を採用することがあるが、今回の改正法は常識の域を超えているように思われた。
そのため、法律No.171-Ф3を深く掘り下げて検討し、メディアを騒がせた条文を探してみた。この法律は、百ページ以上の長いもので、それは用語を定義した上で、ロシアでアルコール飲料を生産するための条件を定め、ロシアの生産者に一定の制限を課している。
シャンパンという文字は、同法の第2条に一度だけ出てくる:「アルコール製品は、スピリッツベースの飲み物(ウォッカ、コニャック、グレープウォッカ、ブランデーなどを含む)、ワイン、酒精強化ワイン、ロシアのシャンパンを含むスパークリングワインなどに分けられる….」。改正前の法律には、シャンパンという文字が「スパークリングワイン」という文字の傍らに多く書かれていたが、改正法では、シャンパンはスパークリングワインと同義ではなく、すべてのスパークリングワインがシャンパンではないため、広くシャンパンという文字が削除されている。
法律No.171-Ф3の第11条では、ロシア国内の小売店で販売されるアルコール製品には、ロシア語で以下の情報を記載しなければならないと規定している。
* アルコール製品の名称
* アルコール製品の価格
* 生産者の名前(法的住所)
* アルコール製品の原産国、…その他の主に技術的な情報を含む
シャンパンの場合、アルコール製品の名称はスパークリングワインであり、ボトルにはそれを、できれば裏ラベルに記載する必要がある。フランスの輸出業者が製品にシャンパンと名付けること自体は禁止されていない。
問題は法律の第2条にある「ロシアのシャンパン」という文字の組み合わせで、法律の中ではこれが唯一議論や紛争になる可能性があるものの、フランス産シャンパンの輸入業者に何の制限もない。出所のはっきりしない誤った情報が燎原の火のように広がったことを受けて、ロシア連邦農業省は2021年7月7日に法律を明確に解説した。それによると、アルコール製品の流通に関する法律の新バージョンで、シャンパンという文字の使用は禁止されていないと説明している。
それにもかかわらず、著名な雑誌「The Trademark Lawyer」は、2021年7月22日号で「シャンパンのラベルに関するロシアの新法がWTOへの提訴のきっかけになるかもしれない」と題した記事が掲載された。この記事を執筆したのは、ロンドンのエンリコ・ボナディオ氏(Enrico Bonadio)とアリカンテのマガリ・コンタルディ氏(Magali Contardi)である。彼らは、改正法によって、フランスのシャンパン生産者が自分たちのワインにシャンパンという名称をつけることができなくなったと書き立てた。これは事実と著しく異なっており、特にロシアの管轄機関であるロシア連邦農業省はこの情報を虚偽として否定している。
必要であれば、我々はこの問題について議論を続ける用意がある。