米国内外の企業は、米国における商標登録の価値とメリットをますます認識するようになってきているが、残念なことに、過去1年間の新規商標出願件数の歴史的な急増とともに、不正確なものから詐欺的なものまで様々な不審な出願が増加している。商務省連邦監察官室は、出願データ(2019年10月2日から2020年4月30日の間に申請された商標出願)を分析し、疑わしい出願の増加に対抗することを目的とした規制強化の必要があることを明らかにした。USPTO(米国特許商標庁)も以前からこの問題に対応するため、積極的に商標保護の取り組みを強化してきた。
過去1年間のUSPTOへの商標出願が40%以上増加し、史上最多となっている。この出願件数の増加は、国境を越えた電子商取引の成長、外国政府の補助金、新規事業の驚異的な増加など、パンデミック中の様々な要因によってもたらされたものである。
USPTOに法の執行権限がないが、調査によって弁護士の不正行為が発覚した場合、USPTOの登録統制局(Office of Enrollment and Discipline:OED)に照会し、犯罪行為が疑われる調査結果については執行機関と連携して対処する。
もし、USPTOの規則に違反している疑いがある場合は、理由開示命令(show-cause orders)を発行し、出願等の行為が正当なものであることを証明するよう求める。対応が不十分な場合や規則を回避する意図で出願されたことが明らかになれば、不正な出願の抹消や商標システムへのアクセス遮断などの制裁措置を命じる。また、ログイン、本人認証、ロールベースアクセス制御などによりデータベースのセキュリティを強化し、悪質な業者による今後の出願を防ぐこともできる。
他にも、USPTOは使用証拠の登録後検査プログラム(Post-Registration Proof of Use Audit Program)で、不正確な使用証拠を提出した場合に罰金を科す措置を1月より実施し、また、まもなく施行される2020年商標近代化法(Trademark Modernization Act of 2020)では、適切に使用されていない、または使用されていないと思われる登録に対して、第三者が異議の申立てをできるようになる。
商標出願の急増は課題を生み出しているが、こうした課題は、米国の商標登録の大きな価値を浮き彫りにするものでもある。USPTOに登録されたブランドは、これまで以上に高い評価を得ており、その地位の向上は、常に進化し続ける米国の商標制度の直接的な成果といえるだろう。今後も、国内外の関係者と協力して、登録を保護し、真の永続的な価値を持つ商標を発行していきたいと考えている。