2021年6月7日付の韓国特許庁報道資料によると、2021年第1四半期の韓国商標出願が同期間における歴代最高値を記録した。今年初めの当所Newsletterでは、2020年の新型コロナウイルスによる困難な経済状況のなかでも韓国では商標出願が過去5年間で最高の増加率を示したと紹介したが、その後2021年第1四半期には前年同期の65,826件に比べ約22.4%増加した80,576件の商標出願件数を記録し同期間における歴代最高値となった。
これと関連し韓国特許庁は、最近5年間の役務分野における出願増加率(5年平均12.1%)が他商品分野の出願増加率(5年平均7.7%)より高いという点に注目している。そのなかでも出願件数が最も多い役務分類は商品分類第35類のインターネット/モバイルショッピングモール業などで、2021年第1四半期の第35類の出願件数は前年同期に比べ3,349件増加した34.9%の増加率を示した。これはデジタル・非対面経済の成長によるオンライン事業者の増加傾向が第35類の役務を指定した商標出願に反映されていると分析され、実際にも最近5年間、通信販売業種の事業者登録率が増え続けており、特に2020年には前年比30%以上増加した。
一方で、韓国国民の商標制度に対する認識の高まりも出願件数の増加に影響を及ぼしたと評価されている。昨年韓国では、冒認出願登録が紛争に発展した事例がたびたびマスコミで報道され国民的関心を集めた。一例として、第三者が韓国教育放送の有名キャラクター「ペンス」(ペンギンの着ぐるみのキャラクター)や有名歌手「ソン・ガイン」の名前を無断で出願した事例や、人気テレビ番組で紹介されたメニューの名前である「トプチュク」(かけお粥)を無断先行獲得した事例など、第三者による冒認出願の問題が頻繁に発生し、マスコミ報道やSNSを通じて拡散されることで自然に商標出願の重要性を認識できるきっかけとなり、商標出願の増加につながったという分析である。
2021年第1四半期の韓国国内商標出願件数の増加は、コロナによるデジタル・非対面経済の成長と商標出願の重要性に対する全般的な認識向上に起因したものといえ、このような出願増加傾向は当分持続すると展望される。したがって韓国で使用可能性がある商標は早急に出願し関連権利を確保しておくことが望ましく、非対面時代において日々重要性が高まっている35類への出願にも関心を向ける必要がある。
(出処:表・グラフは全て韓国特許庁)