コインポケットは、ジーンズの前ポケットの右上にある小さなパッチポケットのことだが、ロゴが入っていることもあれば また、斜めに配置された長方形の布地が付いていることもある。斜めに配置された長方形のラベルが付いていれば、それは「DIESEL」というブランドのジーンズだ。なぜなら、その斜めのラベルは商標だからだ。
少なくとも、ハーグ控訴裁判所は、ディーゼル(Diesel)とカルバンクライン(Calvin Klein)の間の訴訟でそれを確認した。
ジーンズメーカーのディーゼルは、ベネルクスにおいてコインポケットに斜めに配置したラベルを商標登録した。いわゆる位置商標で、標章を商品などに付す位置が特定される商標だ。
商標は有効か?
ディーゼルは、カルバンクラインがジーンズのコインポケットの横幅全体に入れた「Calvin Klein」のブランド名を記したラベルが、ディーゼルの位置商標の権利を侵害していると主張した。カルバンクラインは、コインポケットにラベルを付けることはデニム市場で一般的なことであり、ディーゼルの斜めのラベルは、他のラベルと大きく異なる特徴を有してるとはいえないので、ディーゼルの位置商標は裁判所によって無効にされるべきだと反論した。
控訴裁判所はディーゼルを支持した。裁判所は、斜めに配置されたラベルは市場で通常見られるものとは明らかに異なるとの認識を示し、ディーゼルの位置商標は有効な商標であると判じた。
侵害は?
しかし…裁判所は、カルバンクラインがディーゼルの位置商標の権利を侵害していないとも判断した。この場合、この位置商標において重要なのは正確な位置であり、ラベルそのものではない。コインポケットに布製のラベルや商標が付いていること自体は一般的なことであり、斜めの位置が同じでない限り混同の虞はないと考えられると判じた。
商標の有効性は認めたが侵害は認めなかった。位置商標の性質と特定の市場のため、保護の範囲は斜めに配置されたラベルに限定されており、控訴審裁判所はこれを特別とみなした。いろいろある中で、ディーゼルがオリジナルの位置商標として権利主張できるジーンズのラベルの位置を見つけたという事実も、おそらく同様に特別なことである。