2021-10-20

オランダ:商標のスクワッティングと悪意の定義 - Novagraaf

新製品や新サービスを導入しようとする著名な商標の所有者は、第三者が既に同一または類似する商標を出願する「商標の不法占拠」によって妨害される可能性がある。オランダの高等裁判所の最近の判決は、その対応策と理由を示した。

商標登録が競合するのは、必ずしも悪意のある行為の結果ではないが、商標の不法占有の場合は、意図的なビジネスモデルの結果でもある。残念ながら、商標の不法占拠に対抗するのは難しいことも多いが、オランダの高等裁判所の最近の判決は、行動を起こすことが有益であることを示している。

事件の背景
2016年、サムスンは新しい電話アプリケーション「Bixby」の名前を保護するために、EU商標(EUTM)を出願した。それに対して、もともとパキスタンで出願され、その後ベネルクス(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)地域で出願された「Bibby」商標の登録者が異議を唱えた。
しかし、この登録者(Michael Gleissner氏の会社)は数百もの商標登録を持っていたため、サムスンはオランダの高等裁判所に提訴し、悪意に基づくものとして「BIBBY」商標の無効と損害賠償を請求した。

悪意の定義とは
商標の出願人が、その商標を使用する誠実な意図を持たずに商標を取得した場合、悪意があると見なされる。悪意は、商標登録者が他の出願人を妨害する、または、商標の機能の範囲外の目的で独占権を取得する、と定義される。

商標が悪意を持って出願されたことが証明された場合、その商標は無効となる。つまり、その商標は商標登録から削除され、存在しなかったものとみなされる。

商標出願が不誠実に行われたかどうかを判断は状況によって異なる。しかし、確立された判例法では、以下の点が特に重要とされる。

* 争点となった商標が同一または混同するほど類似している
* 権利者が他の商標の存在を知っていた、または知っていたはずであった
* 権利者が不誠実な心理状態または意図を持っている

所有者が不誠実であるかどうかを評価するには、商標の使用予定が関係する場合がある。多くの国では、商標登録者は商標の使用までに5年間の猶予期間があるが、実際に商標を使用する意図が全くない場合は、権利者の不誠実な行為として示すことができる。

しかし、上記の要因はいずれも絶対的なものではなく、例えば、第三者が他の商標の存在を知っていたが、悪意を持たずに類似する商標を出願することもあり得るし、商標が混同するほど類似していなくても、他の状況から出願が悪意を持って行われたということもあり得る。したがって、各ケースはそれぞれの利益に基づいて判断されるべきである。

高等裁判所の判決 
サムスンの「Bixby」商標のケースでは、ハーグ高等裁判所は、第一審裁判所と同様に、商標権を侵害したとされる者が実際に悪意を持って行ったと結論付けた。同裁判所は、サムスンが商標権の侵害者の不正な商標戦略を十分に証明したと判断した。

サムスンは、商標権の侵害者が何百もの商標(多くの場合、周知商標と類似している)を出願し、それらの登録に基づいて無数の異議申立を行ったことを示す証拠を提出した。さらに、商標権の侵害者が不誠実な出願や権利の乱用で有罪判決を受けた他の係争の証拠も提出した。

その結果、裁判所は「Bibby」の商標権者の行為には商業的合理性がないと判断した。また、「Bibby」商標が将来的に使用されることや、使用する意図があったことを示す十分な証拠も示されなかった。それどころか、裁判所によれば、この商標権者は意図的に商標制度を回避しようとしていたようである。この権利者は、自分の名前で登録された多数の企業を持っていたが、これらの企業がビジネスを行う兆候はなく、多種多様な商品やサービスに関する無数の商標を所有していた。

裁判所は、サムスンに有利な判決を下し、「Bibby」商標を無効とし、商標権の侵害者にサムスンの訴訟費用の支払いを命じた。なお、サムスンが請求する損害額については、今後に決定される。

正当な商標出願人にとっての朗報?
今回の判決は、商標権の侵害者やその他の悪意のある第三者に対して行動を起こすことがなぜ有益なのかを示す貴重な例となった。ただし、成功の可能性は個々のケースによって異なることは留意しなければならない。

本文は こちら (Trademark squatting and the doctrine of bad faith)