2021-11-15

韓国:「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」一部改正法律案の改正経過 - Kim & Chang

データの不正使用行為と、有名人の肖像・氏名等の識別標識の無断使用行為とを、「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」(「不正競争防止法」)による不正競争行為として追加する改正案(「本改正案」)が、2021年11月11日に国会本会議で通過しました。本改正案は、まもなく政府に移送されて、特別な事情がない限り、公布される予定で、データの不正使用行為の規定は2022年4月20日に、有名人の肖像、氏名等識別標識の無断使用行為の規定は公布後6カ月が過ぎてから施行される予定です。
 
本改正案は、近年、(i)第4次産業革命、人工知能等のデジタル時代の根幹であるデータの重要性が日増しに高まっている中、ビッグデータを活用して経済的付加価値を創出していても、データを保護できる法的基盤が不備なため、良質のデータを円滑に利用・流通することが阻害されている点、及び、(ii)有名人の肖像・氏名等を用いる製品・サービスが多様化していながら、関連する不法商品の製作・販売行為も増加しているにもかかわらず、有名人等の財産的損失や消費者に発生した被害を適切に保護することに限界がある点につき、これらの行為をそれぞれ不正競争行為の類型と規定して制裁することにより健全な取引秩序を確立し、不当な被害から消費者を保護しようとすることを改正理由として明らかにしています。
 
下記では、本改正案の主な内容と影響について、ご紹介致します。
1. データ不正使用行為(第2条第1号ル目新設)
  この法律で保護するデータを「『データ産業振興及び利用促進に関する基本法』第2条第1号によるデータのうち、業として特定人または特定多数に提供されるものとして、電子的方法で相当量蓄積・管理されており、秘密として管理されていない技術上または営業上の情報」と定義し、具体的な禁止行為として、次の4つの行為類型を規定しました。
1) アクセス権限のない者が、窃取・欺瞞・不正アクセス、その他の不正な手段によりデータを取得し、またはその取得したデータを使用・公開する行為
2) データ保有者との契約関係等によってデータにアクセス権限がある者が、不正な利益を得、またはデータ保有者に損害を与える目的でそのデータを使用・公開し、若しくは第三者に提供する行為
3) 1)または2)が介入した事実を知って、データを取得し、又はその取得したデータを使用・公開する行為
4) データの技術的保護措置を無力化する行為
このように本改正案は、データを不正に取得・使用・公開する行為を直接行う場合だけでなく、当該行為が介入した事実を知って、データを取得・使用・公開する行為もデータ不正使用行為と規定しているため、貴社での関連データの取得、使用、公開の際には、こうした点に留意する必要があります。
 
データ不正使用行為については、民事上の差止及び損害賠償請求が可能です。また、本改正案は上記不正使用行為の類型のうち、4)のデータの技術的保護措置を無力化する行為に対してのみ、刑事処罰が可能なように規定しています(第18条第3項第1号)。
 
2. 有名人の肖像、氏名等識別標識の無断使用行為(第2条第1号ヲ目新設)
    有名人の肖像、氏名、音声、署名等その有名人を識別できる標識を公正な商取引慣行や競争秩序に反する方法で自身の営業のために無断で使用することにより、他人の経済的利益を侵害する行為を不正競争行為として新設しました。
  パブリシティー権を直接的に規定した著作権法全部改正案が未だ国会に係属中である点を考慮すると、有名人の肖像等を無断使用した行為が問題になる事案について本新設条項が積極的に活用され得るものと見られます。
 
本改正案に関連して、最近、大法院は他人が営業目的で公開したデータと有名人の肖像、氏名等が有する経済的価値を「相当な投資と労力の成果」と認め、これを無断使用した行為を現行不正競争防止法第2条第1号ル目の不正競争行為であると判断しています。このような判例の基準は、事例によって異なって判断される余地があるため、本改正案の条項を新設するようになりました。
 
ただし、過去に現行の不正競争防止法第2条第1号ル目の不正競争行為が新設されて以降、関連する紛争が持続的に増加した点を考慮すると、今後、本改正案のデータ不正使用行為(ル目)と、有名人の肖像、氏名等識別標識の無断使用行為(ヲ目)とに関連した紛争が増加する可能性があります。これについて本改正案は「不正な手段」、「不正な利益」、「公正な商取引慣行や競争秩序に反する方法」等、その要件に解釈の余地が残り、その規定範囲が広いという点等で多少不明確な面があります。従って、今後も関連する紛争の予防に注意を傾ける必要があり、もし実際に紛争が発生した場合には、多角的かつ深い法律的検討と分析を通じて対応することが望ましいといえます。