2022-01-18

カナダ:マドプロ出願と国内出願における異議申立手続きの違い - Marks & Clerk

マドリッドプロトコルは、商標権者が国際商標を出願、登録、更新、維持するための一元的なシステムを提供しており、2019年6月17日より、出願人が国際出願でカナダを指定することが可能になった。カナダが議定書に加盟してから2年以上が経過し、多くのマドリッドプロトコルに基づく国際商標の出願(マドプロ出願)が審査を通過して第三者の異議申立の対象となり、国内(カナダ)出願とマドプロ出願の異議申立手続の違いを再確認する良い機会になっている。

異議申立書が提出されると、国内出願とマドプロ出願に対する異議申立は、通常、同じ手続きになる。しかし、マドプロ出願に対する異議申立の最初の段階では、重要な相違点があり、それを考慮しなければ、異議申立に致命的な影響を与える可能性がある。特に注意すべきは、異議申立手続を開始するための異議申立書を提出しなければならない期限だ。国内出願の場合、この期間についての基準は4ヶ月延長でき、さらに「和解交渉等を行なうためのクーリングオフ」として9ヶ月延長できるため、合計すると国内出願に対する異議申立書は公告後13ヶ月延長可能で、例外的な状況があれば、さらに延長することも可能だ。一方、マドプロ出願に対する異議申立書は、公告後4ヶ月以内に提出しなければならない(商標規則第125条)。つまり、最初の異議申立期限(公告日から2ヶ月)は、当事者の同意や例外的な状況の有無にかかわらず、4ヶ月を超えて延長することはできない(異議申立書の提出前にクーリングオフ期間を設けることもできない)。この確固たる期限は、商標異議審判部(TMOB)が、マドリッドプロトコル第5条2項(c)を遵守し、異議申立期間の開始の日から7ヶ月以内に国際事務局に通報することを義務付けられているために必要なものだ。カナダでの異議申立期間は、2ヶ月の公告期間から始まるので、1回の基準延長で、公告日から6ヶ月になり、議定書で要求されているように、TMOBが国際事務局に異議申立を通報する期間は1ヶ月となる。また、TMOBは、異議申立書の提出に関して、商標法第47条第2項に基づく期限延長の請求が正当であり、そして、より重要なことは、延長された期限が異議申立期間の開始日から6ヶ月を超えない限り、可能であると最近明らかにした。

マドプロ出願に対する異議申立の厳しいスケジュールを考慮し、TMOBは異議申立書をTMOBの電子サービスで提出するように要求している。オンライン申告は、議定書の期限を守るためにTMOBをサポートし、e異議申立書を使用することで、当事者は商標規則第127条に基づき国際事務局への提出に必要な情報をTMOBに提供することを保証するものだ。TMOBは、異議申立書をPDFのような他の形式で添付して提出すると(国内の異議申立ではよく使われている)、マドプロ出願と異議事由に矛盾や不適切な主張となるおそれがあるとして注意を促している。

マドプロ出願に対する異議申立の期限が延長された場合の最後の考慮点は、新たな異議申立理由の追加に関する制約だ(商標規則第128条)。マドプロ出願の異議申立と暫定的拒絶通知(すなわち、異議申立理由)をTMOBは国際事務局に通報しなければならないため、異議申立書に新しい異議申立理由を追加することはできない。既存の理由に対する補正で、「その理由が最初に主張された根拠を実質的に変更する場合」は、新しい理由とみなされることがある。しかし、TMOBは、異議申立期間中に登録された出願に基づく第12条(1)(d)の異議申立理由(出願商標が登録商標と混同を生じるもの)を含める補正は、対応する出願が異議申立書で最初に参照されている限り、新しい異議申立理由とはみなされないと最近勧告している。マドプロ出願の異議申立人が、権利保全のために不完全な異議理由を提出し、同時に、主張する立場に関して注意深くありたいと望む場合、特に、カナダの実務でクーリングオフが利用できないことを踏まえて慎重に行動する必要があるだろう。

マドプロ出願に異議を申立てるための厳格なタイミングと提出要件を考えると、マドプロ出願に異議を申立てることを検討している当事者は、マドプロ出願への異議と不使用取消請求(Section 45 Proceeding)の取消手続きに規定されている内容を理解し、カナダの商標専門家に相談して、該当する規則、規制、実務を確実に順守する必要がある。

本文は こちら (Opposition procedure in Madrid Protocol applications)