メタバースとファッションブランドへの影響に関する同僚の記事に続き、メタバースにおけるバーチャルファッションの使用と販売から生じる紛争について見てみることにする。
既に多くのファッションブランドは、この仮想世界に参入し、ユーザーがアバターを通じて購入できるウェアラブルNFTを販売している。また、バーバリーやルイ・ヴィトンなどのブランドは、メタバースのオンラインゲーム内限定でNFTコレクションを発表している。しかし、メタバースにおけるバーチャルファッションの使用と販売は、ブランドオーナーに多くの機会をもたらす一方で、無許可のバーチャルグッズに関する新しいタイプの紛争への扉を開くことになった。
World Trade Mark Reviewが最近行った調査では、NFTのオンラインマーケットプレイスであるOpenSeaにおいて、ブランドオーナーに無許可で多数のブランド・ロゴが数千ドルで販売されていることが発覚した。ブランドオーナーがメタバースで注意しなければならないのはOpenSeaだけではない。アクセサリーを購入できるプラットフォームであるRoblox Metaverseで、シャネル、カルティエ、シュプリームなどの高級品が無許可で販売されている。シャネルのブレザーやカルティエの「LOVE ブレスレット」などだ。
高級ブランドは、現実世界で模倣品に対する継続的な戦いに慣れており、経験は豊富だが、メタバースのデジタル・デザイナー・アイテムは、現実の世界よりもかなり安価で簡単に手に入れることができることから、このような虞はますます高まっている。
とはいえ、すべてのNFTが安いわけではない。高級ファッションブランドのエルメスは最近、有名なバーキンバッグにインスパイアされたNFTで問題に直面した。メイソン・ロスチャイルド(Mason Rothschild)に制作・販売された「MetaBirkins(メタバーキンズ)」と称する仮想のバッグは平均約8イーサリアム(約3000ドル)で販売されており、これまでに約45万ドルの利益を得たとされている。エルメスは声明の中で、「これらのNFTはエルメスの商標等の知的財産権を侵害し、メタバースにおける偽エルメス製品の一例である」と述べている。
このような紛争では、メタバースにおけるどのような行為が訴訟対象となるのかについて疑問を投げかけており、具体的には、現物のバッグに対する法的保護はオンライン上の仮想商品にも及ぶのかが問題になっている。
エルメス、グッチ、ルイ・ヴィトンなどの有名ファッションブランドは、商標権侵害の紛争において、広く認識されている商標に依拠できる可能性が高いが、中小規模のファッションブランドは苦戦させられるかもしれない。このことから、ブランドは、現実世界での保護が仮想のメタバースでも享受されるようにしたいと考えるだろう。ブランドは、仮想空間でも予防的に商標を保護することによって、一歩先を行くべきなのだ。そうすれば、メタバースでの商標の侵害的な使用に異議を唱えるプロセスがより明確になるはずだ。
グッチやプラダで既に明らかなようにスピードが肝心である。米国でブランドと無関係の第三者が仮想商品を指定して両ブランドの有名なロゴを商標出願したことに対して、両ブランドは異議を申し立てると表明した。とはいっても、仮想世界が急拡大しており、人々がデジタル資産を購入し、保護するために素早く動くのは火を見るより明らかだ。
ほとんどの場合、NFTの販売で購入者は原資産や知的財産に関する権利を得ることはできない。英国の著作権法はまだNFTを具体的に扱っていないが、NFTの対象となるデジタルファッションアイテムは、独創性や創作性などの要件を満たしていれば「芸術作品」として保護される可能性が高いと思われる。クリエイターが著作権侵害で訴えることができるかどうかは、当該 NFT の種類や、侵害する NFT に原資産であるデジタルコピーが組み込まれているどうかによって異なる。これらのアプローチについては、英国の裁判所で審理されたことはない。
ブランドにとっては、オンラインブランド保護戦略の一環として、仮想プラットフォームを監視し、メタバース内での侵害的な使用を認識することも大切だ。YouTubeやAmazonなどのオンラインプラットフォームが行っているように、メタバースの運営者が侵害行為に取り組むための内部規則やポリシーを導入し、侵害的な利用を迅速に止められるかどうかは興味深い。
メタバースはまだ発展途上であり、これらの紛争が実際にどのような結果をもたらすか興味深いことだが、いずれにせよ、メタバースが現実世界と仮想世界の両方に関与することを選択するかどうかにかかわらず、ブランドオーナーに影響を与えることは間違いなさそうだ。