有名人の肖像・氏名等の識別標識の無断使用行為を「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」(以下、「不正競争防止法」)による不正競争行為として追加する改正案(以下、「本改正案」)が、2021年11月7日に公布された。本改正案の内容のうち、有名人の肖像、氏名等、識別標識の無断使用行為の規定は2022年6月8日に施行される予定である。
有名人の肖像、氏名等の識別標識の無断使用行為(第2条第1号ヲ目新設)
有名人の肖像、氏名、音声、署名等、その有名人を識別できる標識を公正な商取引慣行や競争秩序に反する方法で自身の営業のために無断で使用することにより、他人の経済的利益を侵害する行為を不正競争行為として新設した。
パブリシティー権を直接的に規定した著作権法全部改正案が未だ国会に係属中である点を考慮すると、有名人の肖像等を無断使用した行為が問題になる事案について本新設条項が積極的に活用され得るものと見られる。
今後、本改正案の有名人の肖像、氏名等識別標識の無断使用行為(ヲ目)とに関連した紛争が増加する可能性があるが、これについて本改正案は「不正な手段」、「不正な利益」、「公正な商取引慣行や競争秩序に反する方法」等、その要件に解釈の余地が残り、その規定範囲が広いという点などで多少不明確な面がある。従って、今後も関連する紛争の予防に注意を傾ける必要があり、もし実際に紛争が発生した場合には、多角的かつ深い法律的検討と分析を通じて対応することが望ましい。