2022-03-16

ブランドの類似性と「7つの違い」の原則 - Knijff Trademark Attorneys

「彼らはいつも通りに他のブランドを真似ている」。テキーラ512(Tequila 512)のCEOは、カーダシアン家、特にケンダル・ジェンナーの大ファンということではなさそうだ。その理由は、ケンダル・ジェンナーの新しいテキーラブランド「テキーラ818(Tequila 818)」にある。まあ、これを新ブランドと呼べるかどうかは別として。テキーラ512に言わせると、どちらかというと下手な模倣品だそうだ。

申立てによると、名前の背景にあるコンセプトがコピーされ(512はテキサス州オースチン、818はカリフォルニア州ロサンゼルス郡サンフェルナンド・バレーのエリアコードで、どちらも3桁の数字で中央は”1”)、デザインも似ており(黄色の縦長の長方形に黒の大文字)、メキシコにある同じ蒸留所のものであるため蒸留酒のソース(source)でさえも独自のものではないという。「そして、製品デザインに使用する色や形は、全世界の中から、黄色い縦長の長方形に黒い文字を配する原告の特徴的なロゴを真似ることを被告が選んだ」として、これが単なる偶然とは考えにくいとテキーラ512は主張している。 

この事件は、実に偶然のようにも思える。しかし、もし単なる偶然でないとしたら、いったい何なのだろう。厚かましいモノマネ?、ちょっと行き過ぎたひらめき?、スタイルやトレンドのコピー?、それともクリプトムネシア(Cryptomnesia:本当にあったと信じているが、じつはすでに忘れられた過去の記憶にもとづいている)?。

相違点
このような紛争が発生すると、商標弁護士はすぐに悪名高い「7つの違い」の原則を思い浮かべることだろう。これは、法的な問題に巻き込まれずに何かを真似る方法について、頑強に主張する理論である。実際、「7つの違い」の原則は虚報(disinformation)や妄想に過ぎず、商標法のフェイクニュースなのだが、これだけ根強い誤解があるのだから、もう少し詳しく見てみるのもいいかもしれない。

「7つの違い」という神話がどこから生まれたのか誰も正確には知らないと思うが、単調な規則性を持って再現する。時には悪いアドバイス(「少なくとも7つの違いがあることを確認しなさい」)として出てくることもあるが、たいていは防衛策(「知りうる違いは7つある」)として出てくることが多い。 

類似性
この2つのテキーラブランドを見ると、そのブランディングが互いに似ていないとも言えないので、弁護側は間違いなく相違点に焦点を当てようとする。もし、その違いを数えるだけでよいのならどんなに楽だろう。

しかし、残念なことに、商標法はそうなっていない。違いを数えるのはナンセンスだ。商標法では(著作権法と同様に)、重要なのは類似性であり、相違点ではないのだ。類似性が混同を生じさせる虞がある場合は侵害の問題となる。したがって、2つのブランドの間に7つの相違点があったとしても、混同を生じさせる類似性がある虞はあるのだ。ギリギリ許されるものと許されないものの境界線は、ケースバイケースで引かなければならない。その線ははっきりとしていない。少なくとも、テキーラを何杯も飲んでも、はっきり見えることはないだろう。

本文は こちら (Tequila and the principle of the 7 differences)