韓国関税庁による2020年度の知的財産権侵害品摘発件数は全体で前年比13%増加し、特に郵便物などに対する摘発件数は28.9%急増したことがわかった。一方で一般輸入物品などに対する摘発件数は大幅に43%減少した点で、コロナ禍の影響でオンライン商取引が活性化したことによる、韓国での「小口化」加速傾向に合わせた知財権保護対策の転換が求められる。
2021年12月1日に発表された韓国関税庁の「2020知識財産権侵害取り締まり年間統計報告書」によると、通関段階での侵害品摘発実績は34,773件で、前年(2019年:30,856件)比13%増加した。2018年末から施行されている「知財権侵害郵便物廃棄制度」により、郵便物等に対する摘発件数は2018年の45,657件から2019年には23,928件と大幅に減少したが、2020年に再び30,857件と増加傾向(88.8%)となった。全体摘発実績の中では個人用小貨物といえる郵便物(89%)および特送(=国際宅配便)物品(9.3%)が全体摘発件数の98.3%を占めており、2018年の90%、2019年の83.7%に比べその割合がさらに高まった。これは2020年から本格化したコロナ禍によりオンライン取引が増加し、これにより侵害品が少量ずつ搬入される傾向が高まったことを示している。一方で旅行者携帯品を通した侵害品の持ち込みは、2018年(4,682件)、2019年(4,623件)に比べて90%以上減少した325件にとどまり、やはりコロナ禍の影響が明らかになった。
韓国関税庁が2018年11月26日から施行中の「知財権侵害郵便物廃棄制度」は、知財権侵害が明らかな郵便物に対して通関保留後に廃棄する制度であり、2021年5月21日付に公布された改正日本商標法などでの「外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為を含む」という「輸入の定義」を追加する対策と軌を一にするものとして、2018年に仁川空港国際郵便税関を対象に始まり、今年は釜山龍塘税関(国際郵便物通関)にも拡大される計画である。
一方、関税庁に申告された知財権の権利類型別現況をみると、日本企業による商標権申告は1,107件で全体9,499件の10.7%を占めている反面、デザインや特許などに対する権利申告は活発に行われていないことがわかった。全体の商標権申告件数の推移は、2018年末に6,082件、2019年末に7,794件、2020年末に9,499件と引き続き増加傾向にあり、これは2019年から申告された商標権の有効期間が従来の3年から最大10年までに延長されたことによる影響と把握される。郵便物や特送物品など小口化された侵害品に対する効果的な水際措置のためには、知財権申告のベースを固めておくことが望ましい。
(詳細参照 ‐ 関税庁資料リンク:https://www.customs.go.kr/streamdocs/view/sd;streamdocsId=72059238243953855)
2022-03-02