デジタル化が進む中、AI技術はEUIPO(欧州連合知的財産庁)の業務に重要な役割を果たすことになりそうだ。EUIPOs Digital Evolution ProgrammeのAI実装プロジェクトとEffective Working Tools Programme E3U2 – New Generation Tools Projectの共同作業により、EUIPOは、相対的理由の判断において、AIによる商品・サービスの審査を初めて実施した。最高の品質を確保するため、2022年1月に開催された複数のトレーニングセッションで、審査部(OD:Operations Department)の審査官は、新しいツールをテストする機会が与えられた。寄せられたフィードバックは非常に肯定的で、ツールのさらなる改良に大きく貢献するものであった。
その中核となるのが、指定商品・サービスを評価するために作成されたアルゴリズムで、過去42万件の商品・サービスのデータと比較し、予測を可能にするものだ。さらに、類似を検索することで、意味的に関連性のあるマッチングを確認することができる。これは、従来の技術より検索結果が多く、審査官が意思決定をする際に判断しやすくなっている。されに、新しいシステムは過去の拒絶理由から関連する理由付けを行うことができるので、審査官が拒絶理由を作成する際に役に立つものになるだろう。
この取り組みの成功は、テクノロジーの進歩が大きな要因であったとしても、デジタルトランスフォーメーション部(DTD:Digital Transformation Department)、法務部(LD:Legal Department)、審査部が同じ目標に向かって緊密に協力し合うことで、真の成功がもたらされることを明確に示している。また、AIを活用することで、スタッフの仕事を効率化できることも明らかになった。このような取り組みは、EUIPOがWTR(World Trademark Review)に最も革新的な知財官庁に選ばれた理由を示す一つの例と言えるだろう。