2022-05-10

タイ:文字と数字からなる商標の識別性を認める新しい商標審査基準 - Tilleke & Gibbins

2022年初頭にタイ知的財産局は、2011年に制定された従来の審査基準に代わり、商標登録のための新しい審査基準を発表した。新しい審査基準は、商標出願の審査と商標登録機関による通知の発行が、効率的でタイムリー、かつ現行の実務に沿い、統一された基準に基づいて行われることを目的としている。 

新しい審査基準で取り上げられた主要な問題のひとつで、ブランドオーナーにとって興味深いのは、3文字または4文字と数字からなる商標の識別性であろう。

タイ商標法第7条は、「本質的要素として装飾化された文字又は数字を含む商標には識別力がある」と定めている。これまで、商標登録機関はこの規定を、単語を形成しない又は単語として発音できない3、4文字と数字から構成される商標は、装飾化された形でなければ登録できないことを意味すると解釈していた。 

しかし、新しい審査基準では、商標法の「装飾化された文字又は数字」とは、(言語を問わず)通常とは異なる方法で表現された文字又は数字を指すと解釈されることになった。さらに、新しい審査基準では、3字以上の文字または数字(またはその組み合わせ)が通常とは異なる配列であれば、識別力を有し登録可能であるとしている。 

新しい審査基準の重要な点は、商品・サービスの性質や特徴を説明するような商標は、識別力があるとはみなされないということだ。新しい審査基準では、この理由により登録されない商標の例をいくつか挙げている。例えば、ビタミン剤の「B12」、衣類の「XXL」、ブラジャーの「34B」、メモリーカードの「32GB」などだ。

また、新しい審査基準には、タイ語の文字や数字の音訳には識別力があるとはみなされないと明記しているが、ブランドオーナーは、商標委員会(Trademark Board)や知的財産国際取引裁判所(Intellectual Property and International Trade Court)、上級裁判所などで識別性に関して争う権利を有している。

新しい審査基準は、タイの最高裁判所が、商標登録機関や商標委員会が商標登録を拒絶した後に、登録を認めた判決に沿ったものであることを強調しており、3文字商標の登録を認めた多くの最高裁判決のうち、以下の2件が新しい審査基準で引用されている。

*最高裁判所判決(番号:9480/2552)は、第7類の様々な家庭用電化製品を指定した商標「TCL」に関するもの
*最高裁判所判決(番号:13879/2556)は、第9類の携帯電話及びその他の通信機器を指定した商標「hTC」に関するもの 

新しい審査基準が最高裁判所の判決と整合していることは、タイの商標登録機関によって当該理由で商標の登録が拒絶されたブランドオーナーにとって、前向きで心強いものとなろう。ブランドオーナーは、新しい審査基準の要件を満たしていれば、商標出願に安心感を持つことができる。新しい審査基準は、広い意味で知的財産局が最高裁判決と審査判断の実務を整合させようとしていることを示している。

本文は こちら (New Trademark Examination Guidelines Recognise Distinctiveness of Marks Consisting of Letters and Numerals)