【当事者】東阿阿胶公司(第 1 審原告) VS 同仁堂公司等3社(第 1 審被告)
【争点】
①「東阿阿胶」の包装である赤と黒の鉄製化粧箱は一定の影響力を持つ商品包装と装飾に該当するか。
②「東阿阿胶」の包装である赤と黒の鉄製化粧箱に類似する包装に対する無断使用は、不正競争に該当するか。
【事件の経過】
鄭州沖鋒舟商貿有限公司(以下「沖鋒舟公司」)は某通販サイトで「東阿阿胶」の包装と装飾に近似する阿胶の錠剤を大量に売りさばいていたことが、東阿阿胶公司に発覚された。調べたところ、生産者は保定賽行阿胶有限公司(以下「賽行公司」)であり、販売総代理店は同仁堂公司であり、両者は業務提携契約を結び、阿胶の錠剤の販売に合意を達成し、製品の包装は同仁堂公司により提供される。
【原告側の主張】
①「東阿阿胶」の包装である赤と黒の鉄製化粧箱とその装飾は一定の影響力を持つ商品包装と装飾に該当する。
東阿阿胶公司は、中国国内で阿胶とその関連製品を生産する最大手であり、「東阿」と「東阿阿胶」は両方とも、中国馳名商標であり、全国重点保護ブランドや中国業界標識的ブランドなどに選ばれたこともある。製品の品質を向上させる同時に、製品の包装の更新にも力を入れていた。2010 年 9 月に、製品の包装を従来の段ボールの化粧箱から鉄製化粧箱に変更し、化粧箱の意匠登録と美術作品著作権登録も行った。
東阿阿胶公司の継続的な使用と高強度の広告宣伝によって、当包装と装飾は公衆に周知され、かつ阿胶の製品に連想させるようになったため、商品の出所を区別する機能を備え、極めて高い識別性と高い商業上の価値を有する。
②同仁堂公司、賽行公司と沖鋒舟公司の行為は不正競争に該当し、上記3社の侵害行為の停止と相応の損害賠償責任を求める。
【1審判決の要点】
①東阿阿胶の製品の包装と装飾は、長期的・安定的に使用されることによって、商品の出所を区別する機能を備えるようになり、公衆が当包装と装飾を通して阿胶の製品に連想することが固定的になったため、他の経営者の商品と区別できて、なお全国範囲で一定の知名度を有するようになったことが分かった。よって、「東阿阿胶」の包装である赤と黒の鉄製化粧箱とその装飾は、一定の影響力を持つ商品包装と装飾に該当する。
②比較したところ、両者の包装は、全体的な形状、材質、黒と赤の配置比例、文字のレイアウトなどは基本一致している。よって、同仁堂公司と賽行公司が共同生産し、同仁堂公司が販売する行為は、不正競争に該当する。
③したがって、同仁堂公司と賽行公司に対し、侵害行為の停止と東阿阿胶公司への損害賠償を命じた。
【上訴側同仁堂公司(一審被告)の主張】
①本件包装と装飾が「東阿阿胶」の包装と装飾とは同一でもなく、類似でもない。阿胶製品と阿胶の錠剤がそれぞれ医薬品と保健食品に属し、製品の価格も離れている。
②本件包装と装飾が「東阿阿胶」の包装と装飾を合理的に回避し、一般消費者にとって、肉眼で観察しても、通販サイトで検索しても、商品の出所について混同させることがない。
【2審判決の要点】
①阿胶製品と阿胶の錠剤がそれぞれ医薬品と保健食品に属するが、その名称は極めて近似であり、原材料と目標消費者の面で重なっていて、機能と用途の面でも緊密に関連している。関係する公衆の認識によれば、両者の間に特定の関連性を有すると誤認することは容易であり、両者は類似商品に該当する。
②本件商品の包装と装飾は、全体的な形状、材質、黒と赤の配置比例、文字のレイアウトなどは、「東阿阿胶」の包装と装飾と極めて近似し、商標及び商品情報及び蓋の紋の模様などの細部しか異ならず、この差異は全体的な視覚効果に対する影響は限られている。
③東阿阿胶公司は商品の包装と装飾を長年にわたり使用し、宣伝していることで知名度を得たことを考慮し、同仁堂公司は本件包装と装飾を類似商品に使用することは、公衆が商品の出所を混同することまたは両者が特定の関連性を有すると誤認することを容易に招く。
上記の理由で、2 審担当の上海知識産権法院は一審の判決を支持した。
(出処:https://mp.weixin.qq.com/s/BzlmLbRD3nP4d6Mk3dKHtA)