2022-06-27

米国:食品ロゴの商標紛争、図形商標における混同のおそれ - Novagraaf

ビジネスで「強力な」ブランド名を選ぶことは簡単な仕事ではない。業界や市場によっては、希望する名称がすでに第三者によって商標登録されていることもある。もし、似たようなロゴを選んでしまったら?Yordi van Weeldenが、米国で起こった最近2つの食品会社の商標紛争を取り上げてこの問題を解説する。

特に競合の多い市場では、事業のためのユニークなブランド名を見つけるのは難しいことだ。場合によっては、選択した名称が商標登録の要件を満たす識別力を備えていないこともある。また、その名前がすでに第三者によって使用されている場合もある。もし、すでに使用されているロゴと類似しているものを選んだ場合はどうだろうか。

最近米国で起こった、フードデリバリー会社グラブハブ(Grubhub、ジャストイート・テイクアウェイドットコム傘下)と弁当宅配サービス会社ホームシェフ(Home Chef、
スーパーマーケットチェーンのクローガー傘下)の商標紛争は、有益な実例を提供している。これらの食品会社の名称は異なるが、両社のロゴは、共に家の中にナイフとフォークのある図形で構成されている。 

ホームシェフとグラブハブの商標紛争

ホームシェフの商標(写真左)は、米国において商品の輸送、梱包、保管サービス(39類)と弁当料理の提供(43類)を指定して登録されている。クローガー(ホームシェフ)は、商標権侵害を理由にジャストイート(グラブハブ)のオレンジ色の商標(写真右)の使用差止めを求めた。 

グラブハブは、クローガーから数回にわたる使用停止通告書を受け取った後、イリノイ州の裁判所に対し、グラブハブ商標がホームシェフ商標を侵害しないことを確認する宣言判決(declaratory judgement)を求めた。 

図形商標における混同のおそれ
商標法では、公衆の間で混同を引き起こすおそれが高いと判断すれば、先行する商標登録権者は、(とりわけ)類似の商品・サービスに類似の標識を使用することに異議を唱えることができる。類似性があるかどうかを評価する際、各法域の裁判所はいくつかの要素を考慮している。例えば、EUでは、問題となる商標の外観的、称呼的、観念的な類似性を考慮する。これは、商標(または標章)が一般消費者に与える全体的な印象に関するもので、それによって、商標の識別力のある支配的な特徴が考慮される。

これに対し、米国イリノイ州の裁判所は、類似性、意図、実際の混同を含む7つの要因を検討した。

米国裁判所の判断
2021年10月6日の判決で、イリノイ州の裁判所は、グラブハブが常に且つ一貫して、よく知られたグラブハブのブランド名とオレンジ色の家のロゴを併用して使用していることから、両商標の間に混同のおそれはないとの判断を示した。さらに、色彩(グラブハブは明るいオレンジ色、ホームシェフは緑色)とイラスト(グラブハブのものは煙突、丸い縁取り、張り出した屋根を持つ漫画っぽいユニークな家で、一方ホームシェフのものはシンプルで飾り気のない五角形)の両方の点で、スタイルが異なっていると裁判所は認定した。

2022年5月25日に出された最終評決で、裁判所は、混同のおそれについてホームシェフの主張が充分ではないとして、混同のおそれにおける重要な要素(類似性、意図、実際の混同)はグラブハブに有利に結論づけた。これにより、グラブハブは米国で引き続きロゴを使用し続けることができる。 

商標登録における競合リスクを回避する方法
識別力のある効果的なブランドを創造し、立ち上げるには、時間も資源も資金も必要だ。選択したブランドを本当に使用・登録できるかどうか確認するためには、商標出願前に図形を含めてアベイラビリティ(クリアランス)調査を行うことが重要だ。

本文は こちら (Battle of the food logos: Likelihood of confusion and device marks)