飛行機の尾翼ほど、どこの航空会社の飛行機かを一目で分からせるものはないだろう。KLMオランダ航空の尾翼には、白地に水色の文字で「KLM」と書かれている。また、カンタス航空の赤地に白いカンガルーも有名である。同様に有名なのがルフトハンザ航空の黄色と青の尾翼であった。後にこの黄色部分はリブランディングで白になり、すっきりした印象になったが、オリジナルの魅力は失われていない。
しかし、ポーランドのLOT航空は、ルフトハンザが尾翼のロゴをEU商標として出願したとき、これを快く思っていなかった。LOT航空は、自社のロゴと「尾翼マーク」商標に基づいて異議申立てを行った。
LOT航空の主張は認められるのだろうか?ロゴに対する異議申立てを正当化するためには、かなり強い類似性が必要だ。一見して、ルフトハンザとLOT航空のロゴは似ているようにも見えるが、よく見てみると、外観的に多くの違いがあることがわかる。例えば、ロゴに描かれている鳥はまったく違うし、青の色合いもまったく同じというものでもない。白い円は似ているが、それは強い識別要素ではない。これらから、尾翼のロゴがそれほど似ているとは思えない。EUIPO(欧州連合知的財産庁)も同じ結論に達し、外観的にこれらの標章は類似していないと判断した。観念的には類似しているが、原則として、観念の類似は混同を生じると想定するのに十分ではない。EUIPOは混同の虞はないと判断し、したがってルフトハンザの商標登録を拒絶する理由はないとして、LOT航空の異議申立ては却下された。