商標には遵守しなければならない決まり事がある。そのひとつは「識別力を有すること」で、識別力を欠く商標や、単に商品の特徴を記述しただけの商標は登録を拒絶される。EUIPO(欧州連合知的財産庁)は、EUTM(欧州連合商標)が出願されると、その商標がEUのいずれかの言語で記述的な意味を持つかどうかを審査し、該当すれば拒絶理由となる。
但し、英語、スペイン語、イタリア語などのEU公用語において商標が意味を持たない場合はどうだろう。あるドイツ企業が「Klötenköm」という商標をアルコール飲料を指定してEUTMとして登録しようとしたが、当局の調査により、「Klötenköm」は低地ドイツ語で卵酒の一種を指し、アルコール飲料を記述するものであることが判明した。
商標権者はこれに不服を申立てた。商標権者は、「Klötenköm」という低地ドイツ語が一握りの人々によってのみ話されている方言であると主張したが、EUIPOは「Klötenköm」が標準ドイツ語にほぼ置き換えられているとはいえ、特に高齢者や地方に住む人々など、低地ドイツ語を話す人はまだ大勢いると反論した。このように、ある国の一部でのみ通用している記述的な言葉は、依然として拒絶理由として十分なのだ。