Slackは人気のチームコミュニケーションアプリで、メッセージの着信時に「tss-pok-pok-pok:実際の音はこちら」という音が鳴る。このような音の標識は、認識しやすく、ほんの数音でどの店にいるのか、何に関係するブランドなのかを簡単にわからせることができる。そのため、このような音の商標を保護することは非常に価値がある。このことに気づいたSlackはこの音商標をEUに登録出願した。
しかし、EUIPO(欧州連合知的財産庁)は、Slackの「tss-pok-pok-pok」には十分な識別力がないとして商標登録を拒絶した。つまり、この音を聞いた消費者は、この音を商標として認識することができないと判断したのだ。
Slackはこの決定を不服として審判請求したが、EUIPO審判部は請求を認めず再び登録拒絶の判断を下した。
Slackは審判で、音商標は有効な商標になり得ると主張し、これにEUIPOは異を唱えなかったが、消費者が商標として認識するためには、音に何らかの味わい深さ(resonance)が必要であり、単に機能的であったり、あまりにも平凡であったりすると、識別力を欠くことになるとの認識を示した。EUIPOによれば、「tss-pok-pok-pok」は単に平凡すぎるということである。
Slackは、この音商標がアプリの使用を通じて識別力を持ち、そのため消費者は「tss-pok-pok-pok」を商標として認識していると反論したが、このような主張は立証されなければならず、それは主張の正しさを確認する市場調査を実施することによってのみ可能である。商標権者は、このような場合、商標が使用されているという証拠を提出するという間違いを犯しがちだが、それでは実際に商標として認識されたことを証明することにはならない。そのため、証拠は決定的なものとは程遠く、このような主張の多くは認められない。
Slackは、多分この件を放置せず控訴することだろう。