2022-07-25

中国:マーキュリー、商標権侵害で元フランチャイジーを提訴、判決は在庫処分を酌量 - Marks & Clerk

 上海水星家用紡織品股份有限公司(Shanghai MERCURY Home Textiles Co., Ltd:以下、「マーキュリー」)は、中国で有名な家庭用繊維製品のメーカーである。同社は一連の「MERCURY」商標を登録しており、その中のNo. 4861666(図下)は、2013年12月に国家工商行政管理総局(旧商標局)から馳名(著名)商標として認定された。 

 2020年、マーキュリーは、以前フランチャイジーであったTengBinがフランチャイズ契約の終了後も「MERCURY」ブランドの使用を継続していることを発見した。マーキュリーはTengBinに対し、侵害行為の停止と25万人民元(約3万7000米ドル)の賠償を求める訴訟を提起した。

 被告TengBinは、2019年にフランチャイズ契約が終了後も、既存の在庫を処分する権利があり、被告による商標の使用は真正品に対する使用にあたると主張した。この主張に基づいて、法院は、被告による原告標章の使用は商標権侵害に当たらず、原告の賠償請求は棄却されるべきであるとの判決を下した。マーキュリーはこの判決を不服とし、上級の人民法院に控訴した。

 控訴審では、2020年9月7日の時点で、TengBinが「MERCURY」商標とロゴを店舗のドアサイン、ポスター、レシートなどに使用しているようであることが指摘され、表面的に見れば、フランチャイズ契約終了後のTengBinによる「MERCURY」商標とロゴの使用は、マーキュリーの商標権侵害に相当するが、他の要素も考慮する必要があるとされ、例えば、TengBinは元フランチャイジーとして、フランチャイズ契約に基づくマーキュリー対する義務を果たすために一定量の商品を購入する必要があり、その結果、契約終了後もTengBinに在庫が蓄積されることになったことなどで、TengBinはこの在庫を処分する際に、販売する商品がマーキュリーの真正品であることを示す目的で「MERCURY」商標を使用した。このような使用は、悪意による使用とみなされるべきではない。また、TengBinは2020年12月29日に店舗を第三者に譲渡し、2020年末に「MERCURY」商標の使用を停止しており、2020年は新型コロナウイルスのパンデミックにより通常業務を中断していた。従って、疑われる侵害行為による損害は軽微であった。マーキュリーは本件商標の正当な権利者であり、その正当な利益は法律によって保護されるべきであるが、マーキュリーは元フランチャイジーに対して、合理的な期間内に純正品の在庫を処分する寛容さも期待されているはずである。上級法院は、競合する利益のバランスをとり、且つ公正を期すために、最終的にTengBinがマーキュリーに対して、訴訟費用を含めて2万元(約3000米ドル)の賠償金のみを支払うべきであるとの判断を示した。

本文は こちら (MERCURY sues its former franchisee for Trade Mark Infringement)