2022-08-10

インド:「JAMES BOND」に賠償命令、「GEMS BOND」の勝利 - Chadha & Chadha IP

はじめに
 モンデリーズ(Mondelez)インド(以下、原告) 対 NEERAJ FOOD PRODUCTS(以下、被告)の事件で、デリー高等裁判所は、被告が米国の食品大手モンデリーズグループ会社キャドバリー(Cadbury)の有名なキャラクター「GEMS BOND」と欺瞞的に類似した商標「JAMES BOND」を使用し、キャドバリーの「GEMS」の商標権を侵害し、パッケージの著作権も侵害したとして、被告の標章に対する恒久的かつ強制的差止命令及び損害賠償を認めた。 

背景
 原告は、被告に対して商標権および著作権の侵害、パッシングオフ、不正競争を理由に差止および損害賠償を請求していた。原告は、原告の「CADBURY GEMS」/「GEMS」製品と同じ配色と同じレイアウトのチョコレートに被告が「JAMES BOND」標章を付して発売したと主張すると共に、「GEMS BOND」のキャラクターの登録著作権に基づく芸術作品の著作権を侵害したと主張した。

判決
 デリー高等裁判所は、トレードドレス、商標権、著作権の侵害及び欺瞞的類似の問題に関する既存の判例について検討し、チョコレートは都市部や地方で子供から大人までが食べる可能性があることに留意した上で、「このような問題を評価する際、完全な混同ではなく、混同の虞でも十分である」との認識を示した。

 さらに、裁判所は原告と被告の製品を精査した結果、被告製品が原告の「CADBURY GEMS」の完全な模倣品であることに疑いの余地はないとし、さらに、これらは大きなパッケージではなく小さなピローパック(pillow packs)で販売されていることから、標章が完全に見えない可能性もあり、混同の虞はさらに高まるとも指摘した。最後に、裁判所は、この製品が幼児を含む多くの消費者を対象としていることを考慮すると、「混同の虞は極めて高い」と判断した。 
以上の点および商標間の称呼的類似性を考慮し、裁判所は原告を支持し恒久的かつ強制的な差止命令を認めると共に、被告に15,86,928ルピー(約270万円)を支払うよう命じた。

結論
 デリー高等裁判所は、本件において混同の虞の評価をする際には、問題となる製品の種類や消費者層など、いくつかの要因を考慮しなければならないとし、今回のケースでは、製品がチョコレートであり、あらゆる年齢層の、また様々な社会経済的背景を持つ消費者の多くが購入すること、製品の価格がわずか1〜5ルピーであることから、「混同の虞が大いにある」ことが示された。これに加えて、使用されている配色、パッケージ、商標が同一または欺瞞的に類似していることから、裁判所は原告を支持する揺るぎない判決を下した。

本文は こちら (Gems Versus James Bond: Delhi High Court Reinforces Test On Deceptive Similarity)