韓国特許庁は2022年4月20日から改正商標審査基準を施行している。その主な内容は次のとおり。
1. 職権再審査基準の明確化
2022年4月20日から導入された職権再審査制度は、登録料納付前までに明白な拒絶理由を発見した場合、職権で商標登録決定を取消した後、審査を再開できる制度である。今回、改正された審査基準は、「明白な拒絶理由」と関連して「優先権主張による他人の先出願登録商標があるにもかかわらず、これを見落として登録決定をした場合、識別力がない単語のみで構成され標章全体で識別力がないことが明白であるにもかかわらず、誤って登録決定をした場合」等の例示を明示することで職権再審査基準を具体化した。また、職権再審査の場合、審査官3人が協議して決め、審査が再開された場合、登録決定を下した審査官が担当審査官に指定されたことを明示することで、職権再審査の判断および審査主体を明確にした。
2. 出願商標の標章変更時要旨変更に対する判断基準の具体化
従来の審査基準でも標章変更時の要旨変更判断に対する基準を提示していたが、審査官別の判断が異なり審査の一貫性に欠けるとの問題点があった。これに対し、標章変更時の要旨変更の未該当理由別に、各事例および説明を追加して判断基準を具体化した。
これと共に、標章の変更は後出願人の利益に反する可能性が大きいので、1)標章の誤記を訂正する場合、出願書および添付書類の記載事項を通して誤記が明白であることを確認できる場合、2)標章の一部削除補正時に識別力がなく顕著に少ない割合を占める部分の削除の場合にのみに許容させることで、要旨変更の許容範囲を縮小・限定した。
3. 使用意思関連の証拠資料の拡大
韓国商標法は先登録制度を採択しながらも使用意思がないということを理由に商標登録を拒絶または、無効にすることができ、審査基準は出願商標の使用意思が疑われる場合、使用証拠または、使用意思証拠の提出を要求することができるように規定している。
使用意思の証拠と関連して従来の審査基準では他人商標の使用権契約書は使用意思の証拠として認めなかったが、改正された審査基準はTRIPs第19条を根拠に他人との商標使用権契約書もまた使用意思証拠として認定する。ただし、使用権契約を結んだ商標権者が被成年後見人に該当するなど、商標使用を実質的に管理、統制することが客観的に不可能な場合には使用意思証拠として認められないことがある。
4. 使用による識別力アンケート調査信頼度判断基準改善
審査基準は使用による識別力関連アンケート調査の信頼性が認められるためには信頼できる調査官が偏りのない公正な質問用紙を使って実施されたアンケート調査でなければならず、回答者(すなわち、該当物品の消費者)が各地域、性別、年齢などの代表性を持ち合わせていなければならないと規定している。
これと関連して、従来の審査基準によれば質問に答えた標本数が500人以上である場合は信頼度が高いアンケート調査として判断されたが、改正された審査基準は答えた標本数が1,000人以上である場合に信頼度が高いアンケート調査として判断することができ、答えた標本数が500人以下である場合、信頼度が低いアンケート調査と見なすことができるとし、回答者数による基準を明確にした。これは2019年度に導入された特許審判院の商標認知度調査方法ガイドラインを反映したものである。