2022-10-24

EU:製造に関わっていない商標権者に製造物責任、CJEUが認定 - Novagraaf

 商標権者は、たとえ商品を製造していなくても、商品の欠陥に対して責任を負うべきなのだろうか。これは、最近EU司法裁判所(CJEU)で争われた問題の核心となるものであった。Noa Rubinghがこの判決と商標権者に対する影響について考察する。

 家で火災が発生し、火災の原因が新しいコーヒーメーカーにあることが調査報告書によって判明したとする。あなたは保険会社に保険金を請求し、保険会社は商品に表示されている商標の権利者に賠償を求める請求書を送るという事案である。今回の場合、コーヒーメーカーはサエコ社(Saeco Group SpA、フィリップスの子会社)が製造したもので、コーヒーメーカーとそのパッケージには「サエコ」と「フィリップス」の両社のロゴが付されていたため、保険会社はフィリップスとサエコ両社のロゴの商標権者であるコーニンクレッカ・フィリップス(Koninklijke Philips N.V.)に対して賠償請求を行った。これに対して、フィリップスは、裁判で商品の欠陥に責任を負うのは製造者であり、商標権者ではない(欠陥商品を製造していない場合)ので、このような請求には根拠がないと主張した。

 今年7月7日、この事件は欧州の最高裁判所であるEU司法裁判所(CJEU)に持ち込まれ、商品の欠陥に対する責任は、実際に商品を製造した会社(「製造者」)に限定されないという判決が下された。つまり、いかなる欠陥に対しても、その商品に企業名や商標、その他の特徴的な要素をつけた「人」も等しく責任を負う、というものであった。

商標と欠陥商品の責任
 欠陥商品の責任に関するEU指令85/374の第1条では、「製造者」は商品の欠陥によって生じた損害に対して責任を負うと規定されており、同指令の第3条第1項では、「製造者」という用語を次のように定義している。「製造者とは、完成品の製造者、原材料の生産者、構成部品の製造者、および商品に企業名や商標、その他の識別機能を付けることによって、その製造者であることを示す全ての人を指す」と定義している。

 フィンランドの裁判所は、第3条第1項をどのように解釈すればよいか分からず、この事件をCJEUに委ねました。特に、企業名や商標、その他の特徴的な標章が商品に付されること(またはそのための認可)が、商標権者を商品の製造者とみなすのに十分な基準であるかどうかを明確にするようCJEUに要請した。言い換えれば、製品に商標を付した企業が商品を製造していない場合、その企業は責任を問われる可能性があるのかという問題だ。

文脈の問題:裁判所の判断
 判決の中で、CJEUは、EU法の規定を解釈する際には、実際の文言だけでなく、それが出現する文脈や、それが含まれる規則の目的も考慮する必要があるとした。

 例えば、第3条第1項の「製造者を示す全ての人」という文言には、何ら追加的な規定が含まれていない。したがって、この規定の意味における「製造者」とみなされるためには、製造者として[自らを]示す人が実際に商品の製造に関与している必要はない。

 さらに、CJEU は、「製造者」の定義に正しい解釈を与えるためには、文脈上、指令の他の部分を見ることが重要であると判断した。その見解では、EUの立法者が消費者を保護するために「製造者」の概念を広く解釈することを意図していることは、指令の他の条項から明らかであるとした。

 言い換えれば、指令の第3条第1項の広範な目的は、問題となっている欠陥商品の実際の製造者を特定する消費者の負担を軽減することであると考えられ、そうであれば、製造者であることを示す人は、商品に企業名や商標、その他の識別力のある標章を付すことによって、その製造に関与しているか、責任を負っているかのような印象を与えることになる。実際、商標やその他の識別力のある特徴を付けることによって、消費者の目に商品をより魅力的に見せるためにその評判を利用しているのであり、その利用に対して責任を負うことが正当化されうるのである。

商標権者の製造物責任
 したがって、CJEUは、商品に自社名称や商標、その他の識別標識を付した者、または商品にそれらの表示を付すことを許可した者は、指令の第3条第1項の意味における「製造者」と見なされるための追加要件を満たす必要はないと結論づけた。言い換えれば、実際には商品を製造していなくても、商品にその商標を付している商標権者も、欠陥に対して等しく責任を負うことがあるということだ。
 
 このため、フィリップスは、実際に商品を製造していなくても、欠陥のあるコーヒーメーカーによって引き起こされた損害について責任を負うことになる。また、商標を商品に付したり、第三者にそれを許可する際には、常に注意が必要だということを強調したい。

本文は こちら (Trademark owners: Beware of liability for defective products)