2022-12-12

グリーン商標を取り巻く環境の変化 - Chadha & Chadha

はじめに
 グリーン商標は、商業活動において持続可能な開発を促進し、環境意識の高いコミュニティのニーズに合ったビジネスモデルの進化を促すことを目的としている。

 消費者は、消費が生態系に与える影響について、ますます意識するようになってきており、新興企業をはじめとする企業やビジネスベンチャーも同様に、このコンセプトが潜在的な資産価値を持つものと認識している。そのため、さまざまな手段や方法を用いて、ビジネスモデルの中にこのコンセプトを組み込んでいる。ブランディングは重要な手段であり、商標は組織がこれを達成するために重要な役割を果たす。したがって、環境に優しいイメージを作りたいブランドにはグリーン商標が人気だ。

なぜグリーン商標に投資するのか?
 商品やサービスの持続可能性を示すロゴがますます一般的になるにつれ、世界中の法制度がこの種の商標の特異性を認識し、時には証明商標、団体商標、保証商標(guarantee mark)などに分類されることもある。以下、グリーン商標が脚光を浴びるようになった要因を解説する。

*消費者の環境意識とサステナビリティのトレンド
 現在の消費者は、環境に対する感度が高まっており、商品やサービスの持続可能性についてますます意識するようになり、その結果、消費者は常に、その商品が持続可能性の設定基準にふさわしいかどうか、企業に対して安心感を求めるようになってきた。

*グリーン・ブランディングと環境ラベル:理想的なマーケティングツール
 「ゼロインパクト(モビリティー、通信コミュニケーション、エネルギーの3つのインフラ分野をはじめ、住居、教育、金融、医療などの分野において、コストが限りなくゼロに近づく未来)」、「エコ」、「グリーン」、「葉の描写」、「グリーンスローガン」などの言葉やシンボルを利用して、ブランドと一緒に使われる商標は、商品やサービスの持続可能性を伝えることが可能だ。さらに、商標、証明商標、ラベルなどの形で持続可能ブランディングを行うことで、ブランドの信頼性を高め、消費者に提供する商品やサービスが必要な基準を満たしているという真の保証を約束し、市場シェアを高めることに大きく貢献することができる。このコンセプトは、いくつかの新製品の発売や広告キャンペーンで見ることができる。例えば、オーストラリアの「GreenHouse Friendly」ラベル、BASFとPhillipsによる環境基準のラベルとパッケージ、Domtar Paperの環境に優しい紙「Earth Choice」、環境に優しい赤ちゃんのおむつやボディケアなどの家庭用品ブランド「Honest Company」、Greemmom Com.の「Greemmom」、環境に優しい製品を扱うオンラインショップ「Greemmom Com.」、環境に優しい製造工程と持続可能な原材料の「Good and Green – ゴドレジ(ムンバイに本社を置くインドの多国籍コングロマリット)」、「Greener India」、H&Mの「CONSCIOUS」、ZARAの「JOIN LIFE」、代替可能なテーブルウェアと食器製品の「DINEARTH」、無害の自然派美容製品「MamaEarth」、100%植物原料を利用したアーユルベーダで開発された「BIOTIQUE」などである。

*CSR を通じた事業戦略におけるグリーン商標の貢献
 世界中の国が、持続可能な発展を目指す方向に向かっている。例えば、日本、オーストラリア、イギリス、オランダ、ドイツなどの国々では、責任あるビジネス活動を奨励する政策がとられている。そして、インドでは、2013年会社法のもと企業の社会的責任(CSR)が設定された。そのため、グリーン商標の登録により、組織がCSRの約束を実行する能力と機会を与え、市場での好感度をさらに高めることになる。

登録可能性
 これまで、持続可能な知的財産の概念は、主に技術、イノベーション、特許に焦点を当てたままであったが、今日の動きはこのギャップを埋めようとするもので、欧州連合知的財産庁(「EUIPO」)は、サステナブルマークの存在を認め、次のように述べている。

…環境に関する心遣いは、商標出願を考えるブランドオーナーにとって益々重要になってきている。このことは、「Harmonised Green Terms」データベースに「GREEN EUTM」カテゴリーに属する85,000以上のグリーン用語が登録されていることからも証明される。それ以来、EUIPOはそのような商標の出願を200万件以上見てきた。

 そして、それに後れを取っていないもう一つは米国であり、米国特許商標庁(USPTO)の商標データベースには2014年時点でそのような商標出願が10,000件以上含まれている。

 このようなグリーン商標の出願急増は、グリーン商標保護の価値を浮き彫りにしているが、今後の出願は、先行商標を根拠とする、あるいは記述的であることや識別力を欠くことによる異議の申立て対象となるおそれもある。この点、USPTOと商標審判部(TTAB)は、「green」や「eco」などの一般的な用語の使用は、商品・サービスの持続可能性を特定するもので、したがって識別力がないとする判断をいくつか示している。例えば、Cenveoの環境に優しいカードキー商標「GREEN-KEY」の出願は、「グリーン」が記述的であると判断され登録を拒絶された。同様に、Bargoose Home Textiles, Inc.の低刺激で環境に優しい寝具の商標「ALLERGYGREEN」の出願は、記述的で識別性を欠くと判断され登録を拒絶された。

 インドの知的財産庁は、グリーン商標の保護に特別の枠組みを作ろうとしているわけではないが、持続可能性に対する政府のアプローチの変化を考慮すると、それほど突飛なコンセプトとはいえないだろう。いずれにせよ、グリーン商標の出願は、単に記述的に見えるかもしれない商標については、1999年商標法第9条に基づいて異議申立てを受ける可能性がある。ブランドオーナーは、商標を決定する際に登録可能性に影響する要素を念頭に置く必要がある。

グリーン商標の登録
 インド商標局は、持続可能性のサインを商標に含めることを推奨しているようにも思えるが、そのような商標出願が急増していることから、商標の潜在的な一般性(generic aspect )に対してかなりの程度懐疑的になっていると言える。ブランドはこのことを意識しながら、持続可能性を表す用語やイメージの使用によって得られる信頼性を最大限に活用する必要がある。

異議申立てや拒絶を回避するために、以下の点に留意する必要がある。 
*ブランドは、単なる説明的な標章の使用を控え、ブランドの持続可能性の要素を伝えながらエンドユーザーが出所を特定できるような、自社で考案した創造的な表現に焦点を当てる必要がある。

*特徴的な図形要素の使用、色彩の主張、タグライン、様式化、組み合わせ、あるいは標章内の記述的要素に対する独占排他的権利の不要求、さらに本質的に暗示的な標章の採用などが、商標登録を成功させる上で有効な場合もあるだろう。

*もう一つの有効な手段は証明商標だ。インドではインド規格局(BIS)が、環境基準に適合したエコロジカルで安全な製品に対してエコマークの証明書を提供している。さらに、インド工業連盟(Confederation of Indian Industry)が、ブランドの持続可能性を標準化する手段として「GreenPro(環境ラベル制度)」を運営していることも注目に値する。このタイプのエコラベルは、建築や製造分野のエンドユーザーが、建物や工場の建設、運用、保守の際に、環境への負荷を減らすために、持続可能な製品、材料、技術を選択できるようにするものだ。

*ブランドは、自社の標章がセカンダリーミーニング(二次的意味)を獲得しているかどうかを検討することもできる。例えば、ブランドは、標章が独立して認識できるようになった出所表示として識別されているという事実を裏付ける証拠を提供し登録を勝ち取ることもできる。二次的意味は、消費者の認識、長期的な広告、使用などを通じて確立することができる。

結論
 グリーン商標は、環境とテクノロジーの持続可能性という概念をブランドの傘の下に融合させるという重要な役割を担っている。したがって、グリーン商標は製品やサービスをアピールし、ライバルブランドと比較して環境に優しいブランドの優位性を生み出す不可欠なマーケティングツールであり、また持続可能性をキーワードとして、ブランドは企業の社会的責任を果たすことができる。このように、これらの商標は、企業のグリーン・イニシアティブの成長と認知に計り知れない可能性を与えてくれるはずだ。

本文は こちら (The Changing Climate Around Green Trademarks)