スーパーマーケット間の競争は時にかなり激しいものだが、商標権の紛争に発展するケースはほとんど見たことがない。
ところがそれが起こった。スペインのスーパーマーケット・チェーンであるエル・コルテ・イングレス (El Corte Inglés)は、ドイツのスーパーマーケット・チェーンのリドル (Lidl) が出願した商標を好ましく思わなかった。
エル・コルテ・イングレスは、配送料が安くなるなどのメリットがある定期購入サービスに使用している図形商標「Plus」を以前に商標登録した。それに対して、リドルは最近、ポイントカードに使用する図形商標「Lidl Plus」をEUIPO(欧州連合知的財産庁)に商標出願した。
問題はこれらの商標に混同の虞があるかどうかだ。リドルの商標には「Lidl」という文字が含まれているため、潜在的に混同を回避することはある程度可能だろう。一方、ハウスマークを追加したからといって、他人の商標を使用してもよいというわけでもない。EUIPOは、「Plus」がかなり一般的に使われている文字であると判断した。また、2つの商標のグラフィック要素が類似していないことを考慮すると、2つの商標の類似性は殆どないとEUIPOが判断したことは驚くことではない。
とはいえ、混同を招きかねない状況もあり得ないとはいえない。例えば、先の商標がよく知られていて保護範囲が広くなる場合だ。エル・コルテ・イングレスはそのような議論を展開したが、主張を裏付ける十分な証拠を提出することはできなかった。EUIPOの結論は、混同の虞はないというもので、たとえ文字商標や図形商標の一部が商標として登録されていても、一般的に使用されている記述的な言葉であれば権利主張できないとして、異議申立を棄却した。