2023-01-13

中国:CNIPA、商標出願と使用において先行する権利との抵触を回避するためのガイドラインを発表 - 北京路浩

このガイドラインは、市場関係者が商標の登録出願および使用にあたり、誠実と信用の原則を守り、他人の先行権利を損なわず、関連公衆に混乱と誤認を与えないよう導くために制定されたものである。

一、適用範囲
 中国商標法第32条には、商標登録出願が他人の先行権利を損害してはならないと規定している。ここのいう「先行権利」とは、商標登録出願日前に他人が既に享受し、かつ合法的に存続している権利または権益であり、商号権、著作権、意匠権、氏名権、肖像権、地理的表示、影響力を有する商品またはサービス名称、包装、デコレーション及びその他保護に値する合法な先行権益を含む。

二、商標は各種の先行権利と抵触する状況
(一) 商号と抵触する場合
 企業の名称は、自然人の氏名とは同じく、民法典により当該主体に付与された人格権の一つであり、一般に、所在地の名称、商号、業界または事業の特性及び組織の形態からなり、その内、商号は異なる企業を区別するために用いられる主要な要素である。実務上、商標法の分野では、企業名に対する保護は、主に商号に関する権利の保護に反映されている。また、安定的な対応関係を形成した企業名の略称も保護の対象となる。公的機関及びその他の組織の名称、個人のパートナーシップ、個人の商号は、商号に関する権利を参照し、保護され得る。
 実務上、商標の登録出願が他人の先行商号権を侵害したか否かの判断は、先行商号の独創性や知名度、係争商標がその商号の所有者が実際に提供する商品・役務と同一または類似しているか否かと併せて検討される。

(二) 著作権と抵触する場合
 著作権とは、著作者が創作した文学、芸術、科学の著作物に対して法律で認められた独占的な権利のことである。著作権法でいう著作物とは、文芸・美術・科学の分野で、独創性があり、一定の方式で表現することができる知的著作物をいい、一般的には、文芸作品、音楽作品、美術作品、写真作品、グラフィック作品などが含まれる。
 実務上、先行著作権を有するかどうかを判断する場合、一般的には、関連著作物の公刊の証拠、関連著作物の先行創作と完成の証拠、登録証に基づいて判断され、有効な裁定文書などの証拠によってサポートされることもある。

(三)意匠権と抵触する場合
 意匠とは、製品の全体又は一部の形状、図形又はその組合わせ、並びに色彩と形状、図形の組合せに対して行われる美的に優れ、工業的用途に適した新たなデザインを指す。
 実務上、混同のおそれがあるかどうかを判断する際には、商標と先行意匠を全体比較をすることもあり、その主要部分を個別に比較することもある。

(四) 氏名権と抵触する場合
 民法典によると、自然人は氏名を持つ権利と、法律に従って自分の氏名を決定し、使用し、変更し、または他人に使用を許可する権利を有する。法律で保護される氏名には、戸籍上の氏名だけでなく、ペンネーム、芸名、訳名、ニックネーム、通称、ハンドルネームなども含まれる。
 実務上、先行氏名権の保護範囲を決定する際には、氏名の周知性の程度、周知性の分野、商標の指定範囲や実際の使用範囲との関係で検討されるのが一般的である。   
 また、公衆に誤認を与え、公序良俗を害し、その他悪影響を及ぼす氏名(殉職者の氏名、死去の著名人の氏名、著名人の氏名と同一するもの、宗教分野の著名人の氏名等)を商標として登録出願又は使用することは、商標法第10条第1項第7号及び第 8号の規定に違反するものとなる。

(五) 肖像権と抵触する場合
 民法典によれば、自然人は肖像権を有する。肖像画とは、特定の自然人について、一定の媒体に描かれた画像、彫刻、絵画等によって識別される外形的なイメージを指す。
 実務上、商標の登録出願が他人の肖像権を損害したか否かを判断する際には、一般的に、登録出願と使用行為が関連公衆に商品の出所の混同や誤認を生じさせるかどうかを併せて検討する。
 また、他人の肖像(故人の肖像、宗教分野の著名人の肖像等)を商標として登録出願又は使用することは、公衆の誤認、公序良俗に反する、その他悪影響を及ぼす場合、商標法第10条第1項第5号及び第8号の規定に違反することになるので、ご注意ください。

(六) 地理的表示と抵触する場合
 地理的表示とは、ある商品が特定の地域を原産地とし、その商品の特定の品質、評判またはその他の特性が、主としてその地域の自然的または人的要因によって決定されることを示すものである。
 実務上、商標の登録出願が他人の先行する地理的表示と抵触するか否かの判断は、一般的に、地理的表示の客観的存在とその人気、著名度、関連公衆の認識及び不正登録の主観的悪意の有無に照らして検討される。
 また、地理的表示と同一または類似し、公衆に誤認されるおそれのある商標は、一般に商標法第10条第1項第7号または第16条第1項により優先的に規制されることになる。

(七) 一定の影響力を有する商品又は役務の名称、包装又はデコレーションに抵触する場合
 一定の影響力のある商品・役務の名称、包装、デコレーションは、商品または役務の機能的形状のみからなるものではなく、一般的でなく、重要な識別機能を有する標識である。同時に、上記の標識は一定の知名度を有し、関係公衆がその標識によって示される商品・役務の出所を識別できるものでなければならない。一定の影響力を有する商品名とは、商品の固有名称と明らかに区別するものである。一定の影響力を有する包装とは、商品を識別し、携帯、保管、輸送を容易にする目的で商品に使用される補助的な物や容器のことである。一定の影響力を有するデコレーションとは、商品または包装を識別及び美化する目的で付された文字、図形、色およびそれらの組合せを指す。
 実務上、商標の登録出願が一定の影響力を有する商品又は役務の名称、包装又はデコレーションに関する他人の権益を侵害したか否かを判断する際、一般的に商標とその権益の類似度、表示された商品又は役務の関連度等の要素で検討されることが多い。

本文は こちら (路浩知財ニュースレター11-12月号)