2023-01-11

中国:CNIPAの「『商標権侵害の判断基準』に対する理解と適用(22条、23条)」 - 北京路浩

 2022年8月12日に、国家知識産権局(CNIPA)が、「『商標権侵害の判断基準』に対する理解と適用」 を発表した。2020年6月15日、 国家知識産権局(CNIPA)は「商標権侵害の判断基準」を制定し、公布した。 商標権に関する法執行の業務指導をさらに促進し、基準の普及と解釈をさらに改善し、法執行 者が規定の意味を正確に理解し、各地での実施過程における基準の適用に関する質問を迅速に答えるため、国家知識産権局(CNIPA)は、「『商標権侵害の判断基準』に対する理解と適用」を作成した。 当文書は、38条からなる「商標権侵害の判断基準」を逐条解釈した上、各条文に関連する典型的な判例も紹介した。 本稿は、「『商標権侵害の判断基準』に対する理解と適用」の重要な内容を取り上げ、抄訳の上、連載を行う。

第二十二条 登録商標を勝手に改変したり、複数の登録商標を組み合わせて使用することにより、同一の商品またはサービスにおいての他人の登録商標と同じである場合は、商標法第57条第1項に規定する商標権侵害行為となる。
 登録商標を勝手に改変したり、複数の登録商標を組み合わせて使用することにより、同一または類似の商品・サービスにおいての他人の登録商標と類似し、混同を生ずるおそれがある場合は、商標法第57条第2項に規定する商標権侵害行為となる。

 本条に対する解説:本条は、登録商標を勝手に改変し、または複数の登録商標を組み合わせて使用することにより商標権を侵害する場合の法律の適用について規定する。
 登録商標に軽微な変更を加え、登録商標マークを引き続き表示し、または登録商標であることを明記する場合、商標法第49条第1項に規定する登録商標を勝手に改変する違法行為に該当する。変更が大きく、変更後の商標が関係公衆に新しい商標であると誤信される可能性が高く、登録商標マークを引き続き表示し、または登録商標であることを明記する場合、商標法第52条に規定する登録商標に成り済ます違法行為に該当する。強調すべきのは、登録商標を改変して使用することは、登録商標の表明・非表明にかかわらず、使用した商標が他人の登録商標の専用権の範囲に属する限り、商標権侵害となることであり、本条はそのような行為を明確に規制していることである。
 旧国家工商行政管理総局商標局は1998年4月14日に「複数の登録商標の組み合わせ使用及び並列使用に関する意見」を公布し、「商標登録者は認可された商品において複数の登録商標を同時に使用できるが、登録商標マークは一つずつ明記しなければならない」と規定した。 商標登録者が複数の登録商標を組み合わせ、または並列して使用する場合、その使用が元の登録商標の文字、図形またはその組み合わせを変更せず、かつ他人の登録商標の専用権を侵害しない場合は、正当な商標使用とみなされる。 当意見によれば、複数の登録商標を組み合わせて使用することは、正当な使用であるために、同時に3つの要件を満たす必要がある。 第一に、登録商標マークが個別に、すなわち各登録商標の右上隅または右下隅に表示されていること、第二に、各登録商標に変更が加えられていないこと、第三に、他人の登録商標の専用権を侵害することがないこと、が挙げらる。 ここで重要なことは、複数の登録商標を組み合わせて使用することは、個々の登録商標マークの表示の有無や登録商標の改変の有無にかかわらず、組み合わせて使用する商標が他人の登録商標の専用権の範囲に含まれる限り、商標権侵害となることであり、本条は、その行為を明確に規制していることである。

第二十三条 同一の商品またはサービスにおいて、企業名称の商号の部分を強調して使用し、他人の登録商標と同一である場合は、商標法第 57 条第 1 項に規定する商標権侵害行為となる。
 同一または類似の商品またはサービスにおいて、企業名称の商号の部分を強調して使用し、他人の登録商標と類似し、混同を生ずるおそれがある場合は、商標法第57条第2項に規定する商標権侵害行為となる。

本条に対する解説:本条は、企業名称の中の商号を強調して使用することが、先行登録商標の専用権を侵害する場合の法律の適用について規定するものである。
 商標と商号の抵触問題は、執行当局が直面する困難な問題の一つであった。商標の専用権と企業の名称権は、いずれも法定の権利であり、それぞれ商標に関する法律法規と企業名登録に関する法律法規によって保護されている。商標の専用権と企業の名称権の取得は、誠実と信用に基づくものであるべく、他人の商標や商号の信用を利用して、不当な競争をしてはならない。
 商標法第58条によると、他人の登録商標を企業名の商号として使用することが、公衆に誤認を与え、不正競争行為となる場合、不正競争防止法に基づき対処する。行政執行の実務において、企業商号を使用する場面は主に二つある。一つは企業商号のフォント、サイズ、色を変えて商号を強調し使用すること、もう一つは企業商号のフォント、色、書き方を企業名の他の単語と一致することである。 一つ目の状況は、登録商標の商標的使用に該当し、もし他人が同一商品または同一サービスに登録した商標と同じである場合、または他人が同一商品または同一サービスに登録した商標と類似し、混同を引き起こすことが容易である場合、商標法第57条第1項または第2項の規定に従い、処罰されるべきである。後者については、具体的な事案の状況に応じて不正競争行為に該当するか否かを判断すべきである。

本文は こちら (路浩知財ニュースレター11-12月号)