韓国関税庁では、商標権など知的財産権の侵害品に対し、水際措置を通して不正商品の領域内搬入を遮断するための多様な活動を行っているが、最近興味深い発表がありご紹介する。
2022年末に発表された資料によると、韓国関税庁は、海外直接購入(個人輸入)が集中するセール期間である中国の「光棍節(独身の日)」(2022年11月11日)およびアメリカの「ブラックフライデー」(2022年11月25日)に合わせて10週間、海外直接購入悪用事犯に対する特別取締りを実施した。その結果、合計97業者・罰金額810億ウォン規模の不法行為が摘発され、主な摘発品目は食品・医薬品・化粧品(415億ウォン)、バッグ・靴などの服飾雑貨(139億ウォン)、電気・電子製品(79億ウォン)、運動・レジャー用品・玩具類(47億ウォン)等の順であった。
韓国税関では、個人が自分で使用するための物品に対しては一定の条件下で輸入に必要な申告を免除し、また個人使用のための食品・化粧品・電気用品などに対しては輸入申告時に必要な関係法令の許可・承認または関税・付加税を免除する「海外直接購入簡易通関制度」を施行しているが、これを悪用する事例が数多く摘発された。ちなみに韓国ではまだ日本商標法のように模倣品の個人輸入を商標使用上の“輸入”とみなし規制する法改正は行われていないものの、関税法関連規定などによって規制が加えられている状況であり、個人輸入製品は大部分郵便物や国際宅配便のような小貨物形態で輸入されるが、これらに対する鑑定および取締り業務も当所の主要業務の一つである。
税関が発表した主な摘発事例は下記のとおりである。
(1)偽造商品を個人使用のための海外直接購入物品と装うために、不法に収集した顧客100人余りの名義を盗用して輸入した後、需要者に正規商品として販売した行為に対し商標法違反などで摘発
(2)子ども用玩具は輸入時に安全性検査および安全認証が必要であるが、これらを受けずに輸入した玩具製品などに対し子ども製品安全特別法違反で摘発
(3)国内外の有名商標を盗用したノートブック、携帯電話充電器などの電子製品を(関係法令の承認申告などの手続きが免除される)個人使用のための海外直接購入を装って不法に輸入し販売した行為を摘発(製品安全認証基準関連法令違反)
(4)海外から医薬品や食品を輸入・販売するための関係法令の許可・承認などを回避するために、個人使用のための海外直接購入を装って食品・医薬品関連規定を違反した製品を大量に輸入し販売した行為を摘発。当該事例には日本製医薬品(消化剤、湿布など)、食品類(ゼリーなど)が約28万点(82億ウォン相当)含まれていた。
このように韓国に輸入される不正商品に対しては、商標権、デザイン権などの知的財産権以外にも他の法令違反事項を根拠に適切な措置を取ることが可能である。したがって日本の権利者等も自社製品を模倣または権利を侵害する不正商品が韓国に輸入される場合、知的財産権の他にも多様な側面から対応を講じてみることも必要であるという点をご参考いただきたい。