2023-02-24

中国:知財刑事事件における法律適用に関する解釈案の内容 - 北京路浩

 知的財産権の刑事・司法保護を強化し、法により知的財産権侵害の犯罪を処罰し、社会主義市場経済の秩序を維持するために、「中華人民共和国刑法」、「中華人民共和国刑事訴訟法」の関連規定に従い、最高人民法院・最高人民検察院は「知的財産権侵害刑事事件の処理における法律適用の若干問題に対する解釈(意見募集稿)」を起草し、2023 年 3 月 5 日まで、意見募集を行う。

本稿は、今回の意見募集の要点について、簡単な紹介を行う。
 中華人民共和国刑法第二編第三章第七節の第二百一十三条から第二百二十条に、「知的財産権を侵害する犯罪」に関する規定である。
 これらの規定は、基本、商標権侵害(第二百一十三条―第二百一十五条)、特許権侵害(第二百一十六条)、著作権侵害(第二百一十七条―第二百一十八条)と商業秘密侵害(第二百一十九条)の行為が、刑法上の犯罪に該当する場面とその刑罰について言及するものである。
 ただし、知的財産権を侵害する行為は、直ちに刑法上の犯罪に該当するわけではない。侵害行為が犯罪として処理されるには、「情状が重大」などの要件を満たす必要がある。そして、それらの犯罪に対し、自由刑と財産刑の両方を適用することが可能である。
 しかしながら、今までの司法実務では、知的財産権を侵害する犯罪の認定や刑罰の確定に関しては、必ず明確な基準を有するわけではない。
今回の意見募集稿、知的財産権を侵害する犯罪の各種の基準を明確化したものであると言えよう。

今回の意見募集稿は、主に、以下の内容が含まれる。
1.それぞれの侵害が刑法上の犯罪に該当するための要件として、いわゆる「情状が重大」の場面に関して、詳細に規定するもの
(1)意見募集稿の第一条、第四条と第六条は、商標権侵害の行為が刑法上の犯罪に該当するか否かを判断するための「情状が重大」の要件に関する規定となる。
(2)意見募集稿の第七条は、特許権侵害の行為が刑法上の犯罪に該当するか否かを判断するための「情状が重大」の要件に関する規定となる。
(3)意見募集稿の第九条は、著作権侵害の行為が刑法上の犯罪に該当するか否かを判断するための「情状が重大」の要件に関する規定となる。
(4)意見募集稿の第十四条と第十六条は、営業秘密侵害の行為が刑法上の犯罪に該当するか否かを判断するための「情状が重大」の要件に関する規定となる。

2.情状酌量または加重犯に関する規定
(1)意見募集稿の第二十一条は、加重犯に関する規定となる。
(2)意見募集稿の第二十二条は、情状酌量と執行猶予に関する規定となる。

3.罰金刑の場合の金額の算定について規定するもの
(1)意見募集稿の第二十三条は、罰金に関する規定となる。罰金の算定は、基本、「違法所得金額」、「不法経営額」、「権利者に与えた損失額」、「権利侵害模倣品の数」及び「社会的危害」に基づいて、行うことになる。
(2)意見募集稿の第二十五条は、「不法経営額」の算定に関する規定となる。
(3)意見募集稿の第二十六条は、「販売額」と「違法所得金額」の算定に関する規定となる。
(4)意見募集稿の第二十八条は、営業秘密侵害の場合の「損失額」の算定に関する規定となる。
(5)意見募集稿の第二十九条は、営業秘密侵害の場合の「違法所得金額」の算定に関する規定となる。

 また、今回の意見募集稿は、上記内容以外にも、「同一の商標、役務」の定義、「他人の専利を詐称する」ことの定義、著作権侵害の証明責任等々についても規定している。

本文は こちら (路浩知財ニュースレター2023年1-2月号)