事件の主な概要
インターネット検索エンジンサービスを主な取扱業務とする百度在線網絡技術(北京)有限公司(以下、「百度公司」)は、2000年3月16日に第42類「コンピュータ情報ネットワークによるコンピュータ情報の提供」などのサービスで商標「百度」の出願・登録を行った。長年にわたる継続的な宣伝と使用により、商標「百度」はインターネット検索の分野で高い知名度を持っている。北京京百度餐飲管理有限公司(以下、「京百度公司」)は2012年1月に設立され、その後次々に第3分公司、第8分公司などの支社を設立し、その経営範囲は飲食サービス、飲食管理などである。京百度公司およびその支社が経営する施設内の店舗外観、看板、飲料カウンター、メニュー、広告・宣伝、包装された箸、ティッシュボックス、会計レシート、天井照明などにはいずれも「百度」および「百度」を含むロゴが目立つように使用され、WeChat公式アカウントや美団アプリにも前述のロゴが使用されていた。百度公司は、自社の商標「百度」が馳名商標(日本の著名商標に相当)に該当し、京百度およびその支社に商標権を侵害されたと主張し、京百度公司およびその支社に対し、権利侵害の停止と影響の排除を求め、権利侵害で得た利益の3倍で計算する懲罰的賠償を適用した賠償額495万元と合理的な支出5万元を求めた。
一審法院は、提出された証拠により、係争行為の発生時、百度公司の商標「百度」がすでに中国国内で関連公衆によく知られた馳名商標であったことが証明でき、京百度公司およびその支社が経営活動中に「百度」関連表示を目立つように使用したことは、百度公司の商標権を侵害したと認定し、この部分的権利侵害行為について、一審法院は百度公司が提出した懲罰的賠償の請求を支持した。京百度公司およびその支社が提出した係争行為に関する2016年10月から2019年9月30日までの年次および月次損益計算書などの財務資料によると、営業利益の合計は926,710.61元、年間平均営業利益は308,903.54元。係争行為の継続期間は5.25年。商標「百度」の識別性、知名度、係争行為の具体的な状況を考慮し、権利侵害で得た利益に対する商標「百度」の寄与率は35%となった。権利侵害の主観的過失の程度、権利侵害行為の継続期間、権利侵害で得た利益、百度公司に与えた損害などを総合的に考慮し、3倍の懲罰的賠償が適用された。計算式は、308,903.54元×5.25年×35%×(1+3)=2,270,441元。一審は、京百度公司およびその支社に対し、百度公司に与えた経済的損失2,270,441元の賠償を命じる判決を下した。二審は、一審による懲罰的賠償の算定方法および金額を支持した。
典型事例の意義
この事件は、懲罰的損害賠償の算定が規範的になされた典型的な事例である。懲罰的損害賠償の算出で得られる金額は、補填的賠償と懲罰的損害の合計額である。つまり懲罰的損害賠償が適用される賠償総額は、基数および基数と倍数の積であり、まず第1に基数を確定する必要がある。この事件の一審法院は、百度公司の請求に基づき、権利侵害で得られた利益によって基数を算定した。権利侵害で得られた利益は権利侵害者の営業利益に基づいて算出できる。そのうえで知的財産権の寄与率を考慮する必要がある。第2に懲罰的損害賠償の倍数を確定すべきである。懲罰的損害賠償の適用にあたっては、法律に基づいた適用、積極的かつ慎重な姿勢という原則を重視し、賠償基数の相対的な確実性、倍数の合理性に焦点を当てるべきである。
(事例の出典:北京市高級人民法院)