2023-03-31

EU:一文字商標を根拠とした異議申立、一般裁判所の判断は… - Novagraaf

一文字の標章でも、それが指定する商品・サービスとの関係で識別力があることが認められれば、商標として登録することができる。しかし、一文字商標を権利行使することは別の問題だ。Fabienne Maucarréが解説する。

EU一般裁判所の2022年11月9日判決(Case T-610/21)は、一文字からなる商標の権利行使について興味深い洞察を示している。

一文字商標異議申立て事件の背景
この事件は、2018年1月10日にHeinze氏が、文字「K」をシャンプーなど第3類の商品を指定して、文字「K(右図)」を欧州連合知的財産庁(EUIPO)に欧州商標(EUTM)として登録申請したところから始まった。

権利者は、2019年7月10日にロレアル社が第3類の毛髪用剤を指定して出願した「K/K WATER(左図)」の商標登録に対して、一文字「K」の登録商標を根拠に異議を申立てた。

EUIPO異議部は、商標間に混同のおそれはないとして異議を認めなかった。しかし、この決定は、外観的にも称呼的にも両商標が類似しているとして、審判部によって覆された。その後、ロレアル社は審判部の決定を不服としてEU一般裁判所に控訴した。

文字「K」商標事件に対するEU一般裁判所の判決
EU一般裁判所は、2022年11月9日の判決で、審判部の決定を取消し、異議部の決定を支持した。

EU一般裁判所は、「K/K WATER」商標の下部の文字要素である「K WATER」が出願商標の要部である文字「K」に対して二次的なものであるものの、「その重要性は、それを無視することができるほど軽く見ることはできず、要部のみに基づいて両商標の類似性を評価することはできない」とし、さらに、「K WATER」との結合は識別性を無くすものではなく、これを考慮に入れなければならないと述べている。

EU一般裁判所によれば、両商標は外観的な観点から共通の文字「K」のデザインと文字要素の色が異なっており、さらに、両商標には称呼的な差異(争点となる商標の「K WATER」の存在)および観念的な差異(WATERは水を指す)もある。

短い商標だが、EU一般裁判所は、指定商品に対して文字「K」が意味を持たず、その固有の様式から、先行する商標が通常の且つ弱くない本質的な識別力を有するとみなしていることは興味深い。

商標間の混同のおそれを排除するために、EU一般裁判所は「相互依存の原則を機械的に適用すべきではない」ことを想起させている。すなわち、問題となる商品の同一性と商標間の類似性の低さは、混同のおそれを生じさせるのに必ずしも十分ではない。
EU一般裁判所は、本事件における商標間の混同のおそれを認めることが、第3類の商品において文字「K」の独占を認めることに等しいと結論づけた。

文字「K」商標の判決:権利者への影響
今回の判決は、過去の判決よりも厳しいと考える人もいるだろうし、短い商標の権利行使力を制限する必要性を歓迎する人もいるだろう。実際、権利行使の可能性が制限されなければ、アルファベットが26文字しかないにもかかわらず、一文字商標の所有者は、ある分野で権利の独占を享受することになる…。したがって、文字が一般的かつ支配的に存在するだけでは、2つの商標間に混同のおそれを生じさせるには不十分であり、たとえ二次的なものであっても、その差異を考慮する必要がある。

この判決理由は決して突飛なものではないと思料されるが、今後、名声を有する一文字商標を根拠とする異議申立てが行われた場合、当局がどのような立場をとるかは興味深い。

一方、寛大なことに、EU一般裁判所は2023年3月1日に、二文字からなる「ME」商標の識別力は弱いと考えられるにもかかわらず、第25類の被服等を指定する商標「ME」と商標「HE&ME」との間に混同を生じるおそれがあるとの判決を下している(T-25/22)。

二文字目を追加することで、短い標識の本質的に制限された保護の状況は変わるのだろうか…それとも、最終的には、程度の差はあれ、裁判所によるケースバイケースの評価の問題となるのだろうか。

本文は こちら (You can register a single letter trademark, but can you enforce it?)