形状、匂い、音などを保護するような非伝統的商標は、企業が自社の商品やサービスを区別するための手段として、ますます一般的になってきている。EUで音商標を登録する方法についてSavvy Kaushalが解説する。
音商標とは、企業が自社の商品やサービスを識別し、他の企業のものと区別するために使用される音または音の組み合わせからなる商標を指す。登録されている音商標の例としては、マクドナルドのCMの最後に流れるメロディーやMGMのライオンが吠える声、iPhoneの着信音などがある。
しかし、このような商標は所有者にとって価値が高いにもかかわらず、音商標の登録や権利行使が難しい場合がある。
EUで音商標は登録できるか?
EUでは、欧州連合商標規則(EUTMR)第3条(3)において、音商標は「音響又は音響の組合せから構成される商標」と定義されている。
登録要件は;
* 「明確かつ正確」な方法で表現されている
* 識別力があること、すなわち、関連業界で使用されている一般的な音ではない
* 登録された商品またはサービスに関連して使用される
EU商標(EUTM)出願は、明確かつ正確であるという要件を満たすために、音を再現した音声ファイルか、楽譜による音の正確な表現のいずれかを用いることができる。
欧州連合知的財産庁(EUIPO)で認められる表現方法の例としては、楽譜、スペクトログラム、文字による音の説明などが挙げられる。
EUで音商標を登録するのは簡単か?
2021年にEU一般裁判所が下した判決は、音商標の識別性を評価するための実践的なガイダンスを示している。
この判決は、ドイツ法人アルダ・メタルビバレッジホールディングス社(Ardagh Metal Beverage Holdings)が缶飲料の蓋を開けたときの「シュー」という発泡音を保護するために行ったEUTM出願に関するもので、第6,29,30,32,33類の商品を指定して、データで出願したもので、音声ファイルによる出願が高等裁判所に持ち込まれたのは初めてのことであった。
EU一般裁判所は、その判決において、音商標の識別性を判断する基準は、他の種類の商標と同じであるとした。音商標が識別力を持つためには、消費者が音商標とその出所を関連付けることもできなければならず、アルダ事件では、裁判所は、缶の開封によって生じる音は、関連商品との関係で機能的要素であり、関連する公衆は、前々から「シュー」という発泡音を飲み物と結びつけるものだとの判断を示した。
EUで音商標を登録をするのはいい考えか?
上記の判決は、今後音商標を登録しようとする出願人にとって興味深い示唆を与えてくれている。一方では、音商標の識別性を評価する基準は、他の種類の商標に適用される基準と異なるものではないことを明確にしたが、他方では、消費者がユニークな音として認識できるような適切なレベルの響き(resonance)、特徴、識別性が必要であることから、音商標の登録の難しさを象徴している。