2023-05-30

中国:地名、一般名称を含む権利商標の識別性について問われた商標権侵害事件 - UNITALEN

事件の概要
 控訴人(原審被告)の金沙安底斗酒公司、金沙古酒公司はその生産、販売する白酒商品上に「金沙古沙」の標章を使用し、被控訴人の山東嘿豆公司は上述の被疑侵害商品を販売した。一審法院は審理を経て、上述の「金沙古沙」の標章の使用は商標権侵害を構成すると判断した。控訴人(原審被告)はこれを不服として、山東省高級人民法院に控訴を提起し、次のように主張した。(1)商標「金沙回沙酒」には「金沙」の地名および醸造過程における特定の工程の一般名称が含まれており、識別性を有しない。(2)被疑侵害標章の「金沙古沙」は正当に使用されており、金沙窖酒公司に禁じる権利はない。(3)係争商標はすでに地理的表示となっており、パブリックドメインに該当し、商標権保護要件を備えていない。山東省高級人民法院は次のように判断した。(1)金沙回沙酒の白酒商標としての商品の出所を示す役割はすでにその地名および醸造過程における特定工程の一般名称としての知名度を明らかに上回っており、金沙回沙酒は白酒商標としてすでに長期的な使用を通じて比較的高い識別性を獲得している。(2)「金沙古沙」の標章の使用は、被疑侵害商品の出所と金沙という生産地域および用いられている関連の醸造工程を記述的に説明する使用方法を明らかに逸脱した商標的使用であり、正当使用の抗弁は成立しない。(3)係争商標は地理的表示で、公共の資源であり、商標法の保護を受けないことには法的根拠がない。

典型事例の意義
 本件では地名、一般名称が含まれる権利商標の識別性の問題について十分な論述が行われている。商標の識別性の有無について、その本質的な問題は商品の出所を識別する役割を果たすことができるか否かという点にあり、形式上の簡単な判定を行うだけではない。さらに、法院は被疑侵害標章の使用が商標的使用または記述的フェアユースのいずれに該当するのか正確な区分を行った。本件の原審原告および法院はいずれも、原審被告が「金沙」の地名および関連の醸造工程の一般名称を正当に使用することを禁じておらず、原審原告の比較的知名度の高い権利商標がすでに存在する状況において、被告が「金沙」の地名および関連の醸造工程の一般名称を使用する時に、信義誠実の原則に従い、他人の先使用権を侵害してはならないことを求めているだけである。しかし本件の原審被告は記述的フェアユースの範囲を明らかに逸脱し、被疑侵害標章を強調、拡大しており、商標的使用を構成し、商標権侵害を構成するものである。また、登録商標の商品について、地理的表示に認定されていることは、登録商標専用権の行使を妨げるものではない。

本文は こちら (集佳中国知財情報 No.201)