2023-05-16

韓国における商標共存同意制度、立法化の現状 ー Kim & Chang

韓国特許庁が年初に発表した「2023年度業務計画」において導入意思を明らかにした「商標共存同意制度」導入を主要内容とする商標法一部改正法律案が議員立法形式で3月20日付で国会に提出され、5月11日の国会で法案として上程された。同制度は2014年にも商標法全部改正法律案に含まれ国会で審査されたが立法化には至らなかった。しかし、今回は韓国特許庁が同法案の通過を優先課題として推進中であり、業界内でも同意書制度導入の必要性に同調する動きが目立っているだけに導入の可能性が高いと予想されている。
国会で議論中の改正議論の背景と改正案の主要内容は次の通り。

改正議論の背景

 「商標共存同意制度」とは先行商標の権利者の同意があれば類似商標の登録を許容できるようにする制度で、商標の出願段階で先行商標に基づく拒絶理由を克服するための方案で、先行商標権利者が作成した共存同意書を認める制度である。

 現行の商標法上、他人の先登録/先出願商標と同一または類似の後出願商標は登録を受けることができない。特許庁の統計によると、2022年出願商標の拒絶理由の約40%が先行商標との類似性と言えるほど、先行商標との抵触は最もありふれた拒絶理由の一つとなっている。韓国はまだ同意書を認めていないため、先行商標の権利者と全世界共存契約を締結していても、韓国で類似の後出願商標の登録を受けるためには、後出願商標と引用された先行商標の権利者名義を譲渡手続きを通して一時的に一致させた上で、後出願商標の登録後、元権利者に再譲渡するいわゆる「譲渡/再譲渡(Assign-Back)戦略」を活用するしかなかった。このような迂回的登録方案は手続きが複雑なだけでなく、Assign-Backを通して登録された後、どちらか一方が関連商標を後続出願する場合、再び関連商標を全て他方に譲渡した後、登録後に再譲渡される手続きを経なければならない煩わしさが伴う。したがって、商標の登録要件を緩和し、実際の取引社会の実情を反映して出願人の便宜性を向上させるために同改正案が用意された。

改正案の主な内容
 国会に提出された改正案の主な要旨は以下の通り。

1.先登録/先出願権利者の同意による商標登録許可
 先出願主義の例外として他人の先登録/先出願商標と同一・類似の商標を拒絶する条項にその他人から同意を得た場合、登録を認める但し書きを新設した。ただし、同条項は、同一の商標に同一の指定商品を指定する後出願商標については適用されない。

2.登録後、不正競争目的の使用により混同が発生した場合、取消事由を新設
 需要者保護のための補完措置として、同意により商標登録を受けたとしても、登録された商標を不正競争の目的で使用して需要者に商品の品質を誤認させ、又は他人の業務に係る商品と混同させた場合、当該事由がなくなった日から3年以内に登録取消審判を請求できるようにする規定を新設した。

3.施行予想時期
 同制度は改正法公布後6ヵ月が経過した後に施行される。現在の予想では年内に公布される可能性が高く、来年中に施行される可能性があると見られる。なお、立法過程で経過規定に対する修正案が提出されたが、これによれば施行日以前に出願され、施行以後に審査中の出願にも適用される見込みである。

上記法案は最終通過するまでいくつかの追加手続きを経なければならないが、今回は導入の可能性が高く、期待感も高まっている。日本は2017年の商標審査基準の改正で系列会社間の同意書提出による共存登録を認めた後、同意書制度を本格導入する商標法改正案を推進中であるが、両国で同じ時期に推進中の同意書制度が無事に導入されるか、立法化の帰趨が注目される。