英国の商標の世界で演劇番組が再び話題になっている…。
先日、英国のテレビコメディ「オンリー・フールズ・アンド・ホーセズ(Only Falls and Horses)」の製作者による訴訟が成功したことを報告した。そこで、知的財産企業裁判所(Intellectual Property Enterprise Court)は、ドラマの架空キャラクターが独立した著作物になり得るとの判断を初めて示した。
話題は、1980年代のロンドン・ペッカム地区の埃っぽい街から、タブロイド紙の華やかな「WAGS(暗喩として、ご主人のご機嫌を伺い尻尾を振る犬という意味があり、有名サッカー選手の妻やガールフレンドを意味する)」へ移動した。
名誉毀損事件
「WAG」セレブニュースのフォロワーは、英国のサッカー選手ジェイミー・ヴァーディと結婚したメディアパーソナリティ、レベッカ・ヴァーディと元英国サッカー選手のウェイン・ルーニーの妻で元テレビ・パーソナリティ、コリーン・ルーニーとの間で起きた名誉毀損事件に夢中になったことだろう。ルーニーは、自身のプライベートなインスタグラム・アカウントからの投稿をヴァーディが英国紙「The Sun」にリークしたと訴え、勝訴した。
その後、名誉毀損事件をドラマ化したロンドンのウエストエンドでのショーに関連して、「WAG」と知財が最近ぶつかった。この公演の開始後、ヴァーディは、友人が所有するメディア企業の名義で、「WAGATHA CHRISTIE(ワガサ・クリスティ)」を文字商標として英国で登録したと発表した。この劇場作品は、「ヴァーディ対ルーニー:ワガサ・クリスティ裁判(Vardy v Rooney: The Wagatha Christie Trial)」と呼ばれていたが、その後、プロデューサーはこの状況を踏まえて、名称変更を検討しているとも伝えられていた。
「WAG」セレブの世界を知らない人のために説明すると、「WAGATHA CHRISTIE」は「WAG」という言葉と著名作家の「アガサ・クリスティ」をモジった標章であり、名誉毀損事件に関する報道で毎日のように使われていた。しかし、この言葉自体は、2019年10月にさかのぼるツイートで、ヴァーディではなくコメディアンが作った造語とされている。この言葉は著作権として保護されるには短すぎたことで、ヴァーディは商標登録した。
名誉毀損裁判で敗訴したヴァーディは、自分が関わった法廷での出来事を報道するために使われる言葉を(今のところ)自由の使うことができる。この商標登録は、さまざまな商品やサービスをカバーしているが、特に重要なのは「演劇用脚本の出版」に関してだろう。
悪意による商標登録?
最近の展開として、劇場プロダクション側は名称を変更する予定はないと言っており、多くの知的財産実務家は、登録が悪意やコモンロー(未登録の権利)の「パッシングオフ」に対して脆弱であるかどうかを検討している。
悪意とは、1994年商標法において、第三者の利益を損なう不正な意図や、商標の機能から外れた目的で独占権を取得しようとする意図など、非常に高い基準値を持つものである。今回の登録は、少なくともこの点に基づいて攻撃される十分な可能性があり、また、劇場の脚本から庭の剪定までカバーする幅広い指定を見ると、商品/サービスのいくつかは使用する意図がなかったとさえ思われる。
今のところ、問題は「WAGATHA CHRISTIE」が商標登録簿に載っている状況で、劇場のプロダクションが脚本に「WAGATHA CHRISTIE」を使用し、言及していることだ。名誉毀損事件の証言台と同じように、この事件もまた、じっと見守るしかないのだろう。
今回の事件は、商標登録はできるだけ早く申請することが重要であるとことのリマインダーとなった。また、コモンローの不法行為である「パッシングオフ」は、英国における商標登録を無効とするために、営業上の信用がある限り、先行する使用に基づいて利用することが可能であることも痛感させられる。
しかし、もちろん、ヴァーディが登録に対する攻撃を防御することに成功すれば、名誉毀損の裁判には負けたものの、この独占的な権利で大笑いすることになるかも...だ。
本文は こちら (Wagatha Christie trademark: Footballers’ wives in bad faith?)