2023-06-02

EU:並行輸入でジェネリック医薬品の再ブランディングが正当化されるとき - Novagraaf

 並行輸入は、「商標権の消尽(exhaustion of trademark rights)」や「権利消尽の原則(first sale doctrine)」の問題でもあり、商標権者の権利を制限するものとしてよく知られている。ジェネリック医薬品の再ブランディングに関する最近の2つのEU判決から、この実体についてVolha Parfenchykが解説する。

 並行輸入業者は、商標権者の明示的な許可なしに、EUのある国から別の加盟国に医薬品を輸出する権利を有している。しかし、並行輸入業者は、輸入国で販売する前に、ジェネリック医薬品を再パッケージし、より有名な先発医薬品(RMP:reference medicinal product)の商標を含むように再ブランディングする権利も持っているのだろうか。これは、昨年、EU司法裁判所(CJEU)の合議事件(C-253/20とC-254/20)で提起された問題である。

EUにおける並行輸入と商標の使用
 スイスの多国籍製薬会社ノバルティスは、EU商標(EUTM)で保護された2つのRMPをオランダとベルギーで販売していた。1つは「Femara」商標を付して両国で販売されており(Case C-253/20)、もうひとつはベルギーで「Rilatine」商標、オランダで「Ritalin」商標を付して販売されている(Case C-254/20)。

 ノバルティスの関連会社であるサンドは、これらの製品のジェネリック医薬品に相当するものをベルギーとオランダで販売していた。1つは「Letrozol Sandoz 2.5mg」の名称で、もうひとつは「Methylphenidate HCl Sandoz 10mg」の名称であった。

 両ジェネリック医薬品は、並行輸入業者のImpexecoとPi Pharmaによって、オランダから輸出され(価格はかなり安く)、ベルギーで販売された(価格はより高く)。重要なことは、ベルギーでは、輸出されたジェネリック医薬品に付された名前ではなく、ノバルティスのEUTMを引用して、再パッケージ、再ブランディングされたことだ。

 ノバルティスは、ブリュッセルの裁判所に商標権侵害で訴訟を提起し、両事件で勝訴した。並行輸入業者が控訴したため、控訴裁判所はこの事件をCJEUに付託し、予備的判決を仰いだ。

 CJEUは、2022年11月17日に判決を下し、並行輸入業者は2つの条件が満たされた場合にのみ、輸入されたジェネリック医薬品を合法的に再パッケージし、再ブランディングできると結論づけた。第一に、製品を市場に投入して商品化するためなど製品の再パッケージや再ブランディングを行う「客観的必要性」があること。第二に、両製品(ジェネリック医薬品とRMP)が同一であること。

並行輸入品を再パッケージ、再ブランディングする客観的必要性
 CJEUは、確立された判例法を引用して、RMP商標が輸入ジェネリック医薬品に付された場合、RMPの商標権者は、一定の条件下でこの輸入ジェネリック医薬品の商業化に異議を申立てる権利があるとした(ブリストル マイヤーズ スクイブ判決で確立されている)。

 ブリストル マイヤーズ スクイブ判決で確定した最初の条件である「客観的必要性」は特に重要である。これは、再パッケージや再ブランディングへの商標権者による異議が、人為的に市場を分割(artificial partitioning of the market)する場合やEUにおける商品の自由な移動の妨げにつながる場合は正当化できないと定めている。例えば、並行輸入業者が、事前に再パッケージや再ブランディングを行わないと、輸入医薬品の販売に不都合が生じるのであれば、人為的な市場分割になる可能性がある。したがって、このような場合は、輸入されたジェネリック製品の再パッケージと再ブランディングが「客観的必要性」を構成する。 

 重要なのは、CJEUが「客観的必要性」を構成しない例も示したことだ。それによると、製品の再パッケージが特定の商業的利益を得ることのみを目的として行われる場合、並行輸入者は客観的必要性を主張することができないというものだ。これは、例えば、商標の評判を利用するために製品が再ブランディングされる場合や、製品をより利益の高い市場セグメントに位置付ける場合などが当てはまるとされる。このような場合には、RMPの商標権者は、再パッケージや再ブランディングに合法的に異議を申立てることができる。

並行輸入品が「同一である」とはどのような場合か
 輸入ジェネリック医薬品の再パッケージと再ブランディングを成功させるためには、並行輸入業者は「両製品(RMPと輸入ジェネリック医薬品)が同一でなければならない」という第二の条件も満たさなければならない。ジェネリック医薬品とRMPのように、両製品が単に生物学的同等性(同じ活性成分など)を持つだけではこの条件は満たさず、ジェネリック医薬品にいわゆる「狭い治療域(narrow therapeutic margin):副作用が出やすい薬剤における投薬量のマネジメントなど」が必要な場合もこの条件は満たさない。

 「同一である」条件は、両製品が「すべての点」で同一である場合にのみ満たされる。例えば、両製品が同じ会社によって製造されている場合や経済的につながりのある会社によって製造されている場合、あるいは2つの条件の下で販売される本質的に同じ製品である場合などがこれにあたる。

EUにおける並行輸入品の再パッケージと再ブランディングに関するより明確な情報提供
 2022年11月の判決は、「客観的必要性」の基準に該当する可能性のある条件を明確にし、それによってジェネリック医薬品の輸入業者がよく知られていて名声を得たRMP商標を使用する権利を与えられるという点で重要である。したがって、ブリストル マイヤーズ スクイブ判決で確立された医薬品の合法的な再パッケージと再ブランディングの条件を論理的に構築し、さらに発展させている。さらに、「同一」と呼ぶためには、2つの製品の生物学的同等性以上のものが必要であると規定することで、医薬品の類似性の基準も確立している。

本文は こちら (Parallel imports: When is rebranding generic medicinal products justified?)