事件の概要
請求人:北京東来順集団有限責任公司
被請求人:劉玉志
請求人の主な理由:被請求人には明らかに主観的な悪意があり、本件商標は請求人の商標「東来順」に対する複製、模倣を構成するものであり、商標法第13条の規定に違反する。
審理を経て、商標局は、本事件の請求人が本件商標に対して無効審判を請求した時点で、本件商標の登録日からすでに5年が経過していると判断した。商標法第45条の規定によると、請求人は本件商標の出願日以前にその商標「東来順」がすでに関連公衆が熟知していることを立証する必要があるだけでなく、本件商標の所有者に悪意があることも証明する必要がある。請求人が提出した事件証拠により本件商標の出願日以前に、「東来順」がすでに中華老字号(国が認定した老舗企業の称号―訳注)に認定され、関連公衆に広く熟知されるほどの知名度があることを立証することができる。被請求人名義の商標は複数の商品とサービスに関係し、その提出した個人事業主営業許可証に明記された事業内容を明らかに逸脱しているとともに、商標「東来順」の独創性と知名度を考慮すると、被請求人による商標「東来順」の複製、模倣における主観的な悪意は明らかであり、本件商標の登録・使用は容易に公衆を誤った方向に導き、かつ請求人の権益に損害をもたらす可能性があることから、商標法第13条第3項(非同一又は非類似の商品について登録出願した商標が、中国で登録されている他人の馳名商標を複製、模倣又は翻訳したものであって、公衆を誤認させ、当該馳名商標登録者の利益に損害を与え得るときは、その登録をせず、かつその使用を禁止する)の規定に基づき、本件商標を無効とする審決を下した。
典型事例の意義
この事件は商標法第13条第3項の規定を適用することにより、非類似商品上で中華老字号商標を強力に保護し、商標の悪意ある登録行為を取り締まるものであり、中華老字号企業が知的財産権の権利行使に対する自信を深め、知的財産権保護への意識を高め、また、中華老字号企業が新たな情勢の下での新たな活力を奮い起こすよう後押しするうえで、指針としての効果的な役割を果たしている。(陳 思)
(事例出典:中国国家知識産権局商標局ウェブサイト)