新しい商標とブランドに関する意思決定を記録することは、知的財産管理プロセスの重要な一部だが、見落とされることも多い。Vanessa Harrowがその理由とどのように始めるべきかを解説する。
ほとんどの企業は、市場で成功するために商標登録やブランディングがいかに重要であるかを知っているが、それらの重要な資産を生み出すブランド開発プロセスを記録することの重要性を理解している企業はそう多くはないかもしれない。
起きてから寝るまで、平均的な消費者は毎日何千もの商標やデザイン、その他の知的財産に触れている。ブランド開発プロセスが効率的で一貫していればいるほど、混とんとした市場で競合他社に差をつけることができるはずだ。
商標とブランドに関する意思決定を記録する必要性
ブランド開発は、多くの企業にとって困難で時間のかかるプロセスであり、プロダクトオーナー、ビジネスライン、ブランディングチームなどによって責任が分散されることが多い。意思決定を行い、記録するためのツールやワークフローを確立することで、ブランドオーナーは、新しいブランドを立ち上げたり、既存のブランドで新しい市場に参入したりするための創造と拡大戦略のプロセスを合理化できるだけでなく、紛争を回避し、使用の証拠を立証し、数十年後の権利行使で楽ができる重要な知識を得ることができる。
プロセスやワークフローはビジネスの規模や性質によって異なるが、あらゆる種類のブランド開発には一定の共通要因がある。以下がその例である:
* 製品発売/販路拡大のための予算とKPIの設定
* 新しいブランド名やブランド・アイデンティティの候補リスト作成
* ターゲット市場や顧客に対する商業的(および文化的)効果の評価
* 候補となった名称の法的リスクをクリアして、商標登録し、使用の自由を確保
* 発売前の知的財産の様々な要素の保護(および権利行使)の確保
* ブランドに関連する知的財産権の権利構成を整理
* ブランドの将来的な発展と変更の監視
どのパントーン・カラーを製品ロゴに使用するかから、短期的・長期的にどの市場に参入するかまで、ブランド開発の様々な段階で重要な決定が下される。こうした意思決定の理由は文書化されないことが多く、時間が経過して担当者が変わると、その経緯が失われてしまうことがある。これはブランドオーナーにとって大きな問題であり、リスクでもある。
商標とブランディングに関する意思決定を記録する理由
ブランド開発プロセスにおける意思決定を明確に記録することが有益な場面は数多く考えられる。次の3つのケースもその例である。
第1のケース:避けられる紛争
2005年に初めてブランド名とロゴを創作し、商標のクリアランス調査で潜在的な競合や障害を見つけ、考えうる紛争を事前に回避するために努力しなければならなかったようなケースで、例えば、ブランド開発を立上げる前に、先行する権利と差別化できる要素を含むロゴを慎重にデザインし直す必要があり、また、特定のブランド要素、市場、地域を除外する共存契約を結ばなければならなかった。
その後、そのブランドや契約書を作成したチームはすべて退職したのち、2023年に新しいマーケティングチームがロゴデザインを変更する時が来たと判断した。新しいマーケティングチームは、以前に考えられた問題に気づかず、2005年に慎重に導入されたすべての要素を無視した。
2005年当時に先行する権利の保有者は、この変更を不満に思い、新しいロゴの使用を阻止しようとしただけでなく、潜在的な侵害や契約違反に起因する損害賠償を求める訴訟も検討することにした。
第2のケース:紛争の証拠となるもの
そのブランドは20年以上の歴史があり、中国に進出する時期だと判断された。しかし残念ながら、第三者が既に同一のロゴを出願登録しており、新たな出願を妨害している。中国での使用は、この第三者の権利侵害にもなりえる。
この問題を友好的に解決できないため、あなたは裁判を起こすことにした。裁判に勝つために、あなたはブランドの起源を示す証拠を提出するよう求められる。ブランド創作時に携わった者はすべて会社を去り、ブランドがどのように創作されたかを説明する物的証拠はない。
第3のケース:強化された権利行使
そのブランドが最初に作られたとき、ブランドには特に識別力がなく、市場はすでに類似する商標が散見されていた。にもかかわらず、その名称がターゲット市場によく響いたため、その名称は商標出願され、使用は進められた。事業者は獲得した権利範囲がかなり限定されることを認識し、類似する名称を使用する第三者に対して商標権を行使する能力も同様に限定されることを理解していた。
5年後、当初のブランド開発に携わった人は、外部の知的財産アドバイザーを含め全員会社を去った。知的財産は現在、マーケティング・マネージャーが管理しているが、権利範囲が限定的であることを警告されていない。商標ウォッチングサービスを立ち上げた後、マーケティング・マネージャーは類似する商標の出願を数多く目にするようになり、それらの出願に対して登録を阻止する行動を取ろうと考えた。
最良のシナリオは、マーケティング・マネジャーが法的助言を求めていくらかの費用を負担するものの、最終的には何も行動を起こさない決定をすることである。最悪のシナリオでは、第三者との複雑な法的紛争を引き起こし、反訴の可能性を脅かされ、問題解決のために高額な弁護士費用を請求されることだ。
商標とブランディングに関する意思決定の捉え方
この記事で取り上げたように、ブランド開発プロセスにおける意思決定の経緯を追い、記録することは、重要でありながら見過ごされがちな知財管理の一部だ。良いニュースは、このようなプロセスから頭痛の種を取り除くデジタルツールが存在することだ。これには、クエステル社の「Brand Proposal ソリューションが含まれる。革新的でコラボレーティブなソフトウェアツールは、意思決定の経緯を追い、記録するだけでなく、様々な関係者とのワークフローやコラボレーションを改善することが可能だ。
どのようなアプローチを選ぶにせよ、明確なプロセスを持ち、決定事項と経緯を文書化することは、現在および将来のビジネスにとって非常に貴重であり、ブランドの将来に、商業的、法的、財務的な確実性と説明責任を高めることができる。
本文は こちら (Trademarks and branding: Why you should be tracking your brand development decisions)