欧州連合知的財産庁(EUIPO)第2審判部はこのほど、「I Love You」を表す絵文字商標の登録拒絶を支持する決定を下した。EUIPOは、「I Love You」の絵文字は、商標の本質的な機能、すなわち、出願人の商品・サービスの出所を表す機能を果たすことができないとして、登録を拒絶する査定をしていた。Laetitia Cardiが解説する。
ドイツの不動産会社、Käselow Holding GmbHは、2021年12月に第36類の金融および不動産サービスと第37類の建設および建設工事サービスとを指定して図形標識(右図)を欧州連合商標(EUTM)として出願した。
この標識は、親指を開いて、人差し指と小指を伸ばし、中指と薬指を折りたたんだ手を表している。アメリカ手話で、このハンドサインはILYを意味し、世界的に「I Love You」として知られている。
顔文字、スマイリーフェイス、絵文字などは商標として登録できるか?
2022年11月18日に、EUIPOの審査官は、EU商標規則(EUTMR)第7条第1項(b)に基づき、すべての区分でEU商標の登録を拒絶した。この条文は、識別力のない商標は登録を拒絶されると規定している。
審決で述べられているように、EUTMRの当該条文は、消費者または利用者が、混同のおそれなく、商標を付した商品・サービスを他の事業者が提供するものと区別できることを保証することを目的としている。
本件では、審査官は、出願商標は単なる手の複写物とは言えず、ハンドサインであり、つまり絵文字であると考えた。
確立された判例法によれば、肯定的な感情を表現するために使用される顔文字やスマイリーフェイスなどの絵文字は、消費者に純粋な装飾的な要素または広告メッセージと認識されるため、特定の企業の出所を表すのには適さない。
当該役務に関して、消費者は「I Love You」を意味する標識からポジティブなメッセージを推測するだけであり、指定役務の出所を識別することはできない。したがって、この標識の商標登録は認められなかった。
絵文字商標、EUIPOが審判で再考察
審判において、EUIPOの第2審判部は審査官の査定を支持した。2023年6月1日に出された審決は、すべての指定役務について、識別力の欠如を理由に当該標識の登録を拒絶するという審査官の査定を確認し、次のように指摘した;
* 「I Love You」を意味する世界的に知られたハンドサインを表す標章は、ピクトグラム、正確には絵文字であり、テキスト上の会話に感情的な合図を提供することで並行利用する言語の役割を果たしている。
* 指定されているサービスの実情において、この標識は、単純にポジティブなハンドサインの表現として捉えられ、顧客がこれらのサービスに非常に満足することを示す広告メッセージとして認識されるだろう。
* 単純でポジティブなメッセージとして、その標識は指定されたサービスの出所表示としてではなく、むしろ一般的な広告メッセージまたは特有の特徴を欠いた装飾的な要素として認識されるだろう。
したがって、本審決は、顔の表情またはハンドサインによって感情を反映するピクトグラムまたは絵文字は、商標として登録されるためのEUTMRが要求する最低限の識別性を満たさないことを確認するものである。
なお、この審決に対して、2023年8月5日までにEU一般裁判所に上訴できる。
本文は こちら (‘I Love You’ emoji trademark devoid of distinctive character, says EUIPO)