知的財産(IP)は複雑であるせいか、一般公衆によく理解されていないのも不思議ではない。商標の登録、保護に関する初心者クイズに挑戦してみてほしい。
以下の商標に関する一般的な思い込みで、どれが正解でどれが間違いだろうか?
[問題]
Q1.特許庁は、私の商標を侵害する商標出願を自動的に拒絶する?
Q2.商標を使用する前に、他人が自分の商標を使用していないか確認する必要がある?
Q3.日常的に使われている言葉なら何でも商標として使用・保護できる?
Q4.選んだ商標を簡単な単語に限定する必要はない?
Q5.異議申立を受けた場合、出願を放棄しなければならない?
Q6.商標は一度登録すれば、全世界で保護される?
Q7.登録商標であることを®記号で表示しなければならない?
[解答]
Q1.特許庁は、私の商標を侵害する商標出願を自動的に拒絶する?
A:誤り。登録商標の権利を保護するためには、既存の登録を侵害する商標出願に対して正式に異議申立を行う必要がある。商標ウォッチングサービスを利用して新規出願を監視して、同一または紛らわしい類似商標を特定し、出願人に通告書を送付したり、商標局に異議を申立てたりすることができる。
Q2.商標を使用する前に、他人が自分の商標を使用していないか確認する必要がある?
A:正解。使用可能性(または登録可能性)調査は、あなたの商標が選択した市場で使用および/または登録可能かどうかを確認するために推奨される。出願前に確認することで、類似の商品やサービスに対して同一または混同を生じるほど類似した商標を登録している第三者による侵害訴訟のリスクを軽減することができる。
Q3.日常的に使われている用語なら何でも商標として使用・保護できる?
A:複雑な問題だ。たしかに、日常的に使用される用語であっても、識別力があれば商標として保護される。自社の商品・サービスと他社の商品・サービスとを区別することができる場合だ。「Apple:アップル」のような商標がコンピュータに、「Diesel:ディーゼル」のような商標が被覆の分野に商標登録できるのはそのためだ。ただし、日常的に使用される用語はなんでも商標として登録できるわけではない。記述的な用語(リンゴに対するアップルなど)や一般的な用語(掃除機の「Hoover:電気掃除機を意味する一般名称」など)、また攻撃的、公序良俗に違反するとみなされる用語は商標登録を拒絶される可能性が高い。
Q4.選んだ商標を簡単な単語に限定する必要はない?
A:正解。文字商標は、選択した商品名を保護するが、商標保護の対象となり得るブランドの属性はそれだけではない。音、色彩、ホログラム、マルチメディアなどの「非伝統的商標」を含め、ロゴ、形状、パッケージ、スローガン、その他の識別要素や組み合わせについても商標権を取得することができる。ただし、このような商標は一般的に登録のハードルが高くなる。
Q5.異議申立を受けた場合、出願を放棄しなければならない?
A:誤り。第三者から商標登録出願に対して正式な異議申立を受けた場合、出願人は異議申立に対して応答する(異議申立に対してチャレンジする)か、または相手方との交渉(共存同意の締結)の機会を与えられる。弁理士に相談すれば、異議申立の相対的なメリットについての助言やオフィスアクションへの応答、交渉手続きについてもサポートしてくれるので、弁理士に専門的なアドバイスを求めることを勧めたい。
Q6.商標は一度登録すれば、全世界で保護される?
A:誤り。商標権は商標を登録した国または地域のみの権利であるため、ある国で商標登録をしたからといって、自動的に全世界で保護されるわけではない。そのため、商品を販売、製造または輸送する市場で登録を取得する必要がある。複数の国で商標を登録するためには、それらの国々の制度(英国やフランスなど)や地域の制度(EUやベネルクスなど)、世界知的所有権機関(WIPO)が管理する国際商標登録制度を利用することができる。国際商標登録出願により、マドリッド協定加盟している国や地域を一度に指定してWIPOに対して登録出願することもできる。
Q7.登録商標であることを®記号で表示しなければならない?
A:正解。®記号は「登録商標」の略で、ロゴや文字が商標登録されていることを示している。パッケージに使用することで、ブランド戦略の一環として商標を所有していることを示すことができるが、(一般的または特定の国で)登録されていない商標に使用すべきではない。記号™は「商標として使用している未登録の商標」を示し、コモンロー上の権利を示すため、また商標として使用されていることを示すために使用される。