2023-10-24

韓国:商標共存同意制度導入など商標法一部改正案、国会本会議可決 - Kim & Chang

 このたび韓国で、商標共存同意制度の導入、使用による識別力認定の対象拡大などを骨子とする商標法一部改正法律案が2023年10月16日に国会本会議で可決された。当該改正案は公布後6ヶ月が経過した日から施行されるところ、2024年4月頃の施行となることが予想される。主な改正内容は下記のとおりである。

1. 商標共存同意制度の導入
 韓国特許庁の統計によれば、他人の先出願(先登録)商標との同一・類似を理由に商標登録出願が拒絶される事例が40%に上っているが、旧法上では両商標が実際の取引市場で共存しており両商標権利者に互いに共存する意志があっても、譲渡/再譲渡など迂迴的な手続きによってしか商標登録を受けることができないという不便があった。このため改正案では、先出願/登録商標権利者から商標登録に対する同意を受けた場合は例外的に商標登録を受けることができるようにする但し書条項を新設した。ただし、同条項は商標および指定商品がどちらも同一の先出願/登録および後出願間には適用されない。一方、附則上、本改正案の施行前に出願された案件であって施行後に商標登録可否の決定をする場合にも商標共存同意制度が適用されるため、現在出願中の商標も恩恵を受けることができる見通しである。

2. 共存商標の不正使用に基づく登録取消制度の導入
 登録された商標の権利者またはその商標登録に対する同意をした者のうち一方が、自己の登録商標の指定商品と同一・類似の商品に、不正競争を目的に自己の登録商標を使用することで需要者に商品の品質を誤認させ、または他人の業務に関わる商品との混同を生じさせた場合、その登録を取消させることができるようにした。韓国は日本と異なり、審査段階では同意書だけで登録を認めるものの、類似商標の共存による需要者の誤認混同を防止するために登録後取消事由を新設したものである。なお当該取消審判は除斥期限により取消事由に該当する事実がなくなった日から3年を経過した後には請求することができない。

3. 使用による識別力認定の対象の拡大
 これまでは、使用による識別力認定の対象が法文上「性質表示、顕著な地理的名称、ありふれた氏または名称、簡単でありふれた標章」のみに限定されており、それ以外に「その他識別力のない商標」もその対象になるかについて議論があった。このため改正案では、使用による識別力認定の対象に「その他識別力のない商標」も含んで対象になることを明確にした。

4. 国際商標登録出願の国内登録商標への部分代替認定
 これまでは国内登録商標の指定商品が国際登録商標の指定商品に“すべて”含まれている場合にのみ、国際登録による国内登録の代替を認めていたため、最近改正されたマドリッド議定書の規則と一致しない部分があった。このため改正案では国内登録商標の指定商品が国際登録商標の指定商品のうち“一部”のみ含む場合にも部分代替を認める規定を導入した。

5. 納付された商標登録料の返還理由拡大
 これまでは存続期間更新申請後、新たな存続期間が始まる前に商標権が消滅または放棄された場合、すでに納付した商標登録料は返還されないという問題があった。このため改正案では商標登録料返還対象に「存続期間更新の効力発生日前に商標権が消滅または放棄された場合」等を追加した。

6. 商標権消滅規定の整備
 これまでは特許法およびデザイン保護法などの他の知識財産権法律と異なり、商標法は商標権者が相続人なしに死亡した場合の商標権消滅に関する事項を規定しておらず問題があった。改正案では商標権の相続が開始された時に相続人がいない場合、当該商標権は消滅することを明確にした。

7. 出願人の利便向上
 これまでは変更出願と基礎出願についてそれぞれ優先権主張等を別々に行わなければならない負担があった。このため改正案では、変更出願の基礎となった商標登録出願等に、条約による優先権主張や出願時の特例趣旨、およびその証明書類の提出がある場合には、変更出願に対してもその主張および書類の提出があるものとみなすこととし、出願人の便宜を図った。

 上記の改正事項以外にも、(1)審査官の職権補正が要旨変更に該当し、または明確に誤りでない事項を職権補正した場合、当該職権補正はなかったものとみなすこと、(2)国際商標登録出願および国際登録基礎商標権の分割を認めること、(3)国際商標登録出願に対する登録可否決定を、国際事務局を通じて出願人に通知することが定められた。

 このように出願人ないし商標権者の利便性と権益を大幅に改善する内容で商標法が改正された。特に韓国でも日本とほぼ同時期に商標共存同意制度が導入されることになり、今後商標出願の拒絶対応プラクティスが一層簡素化されると展望される。