2023-11-01

工藤莞司の注目裁判:出願商標は提供役務の略語として商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当するとされた事例

(令和5年9月28日 知財高裁令和5年(行ケ)第10045号 「RaaS事件」)

事案の概要 原告(審判請求人・出願人)は、「ラース」の文字と「RaaS」の文字とを上下二段に配した構成の本願商標について、7 類「産業用ロボット並びにその部品及び附属品」、39類「荷役用ロボットの貸与,業務用の荷物運搬用自走式ロボットの貸与,梱包用ロボットの貸与」及び40類「半導体製造用ロボットの貸与,組立用ロボットの貸与,金属加工用ロボットの貸与,食料加工用又は飲料加工用ロボットの貸与」を指定商品及び指定役務として登録出願をしたが、拒絶査定を受けて拒絶査定不服審判(2022-4998)を請求した処、商標法3条1項3号及び同4条1項16号に該当するとして、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて訴訟を提起した事案である。

判 旨 本願商標は、上段に「ラース」、下段に「RaaS」を普通に用いられる方法で二段に表してなり、そして、証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、「RaaS」は、ロボット・アズ・ア・サービス(「Robot as a Service」又は「Robotics as a Service」)の略で、「ロボットをサービスとして提供・利用するサービスであり、・・・、ロボット本体をレンタルし、クラウド上にある制御システムを利用するしくみ」を意味し、「ラース」はその読み方で、このような意味の「ロボット・アズ・ア・サービス(RaaS)」の概念は、指定商品及び指定役務に係る物流業界、製造業界、金属加工業界、食品加工業界を含む産業界において注目を集め、実際一部の業界において、「RaaS(ラース)」と称されてロボットが提供(貸与)されていることが認められる。そして、本願商標は、普通に用いられる方法で表示されたものである。そうすると、取引者、需要者は、「ロボットをサービスとして提供・利用することができるサービスのためのロボット並びにその部品及び附属品」及び「ロボットをサービスとして提供・利用することができるサービスのためのロボットの貸与」を意味するものと理解し、本願商標は、商品の品質、用途及び役務の質、提供の用に供する物、提供の方法を表したと認識するにとどまる。よって、本願商標は、商品の品質、用途及び役務の質、提供の用に供する物、提供の方法を普通に用いられる方法で表示する商標で、商標法3条1項3号に該当する。
 本願商標を「ロボットをサービスとして提供・利用することができるサービスのためのロボット並びにその部品及び附属品」及び「ロボットをサービスとして提供・利用することができるサービスのためのロボットの貸与」以外の指定商品及び指定役務に使用するときは、当該商品及び役務が、あたかも「ロボットをサービスとして提供・利用することができるサービスのためのロボット並びにその部品及び附属品」及び「ロボットをサービスとして提供・利用することができるサービスのためのロボットの貸与」であるかのように、商品の品質及び役務の質の誤認を生ずるおそれがある。 よって、本願商標は商標法4条1項16号に該当する。

コメント 本件事案については、知財高裁も、「RaaS」は、ロボット・アズ・ア・サービス(「Robot as a Service」又は「Robotics as a Service」)の略で、「ロボットをサービスとして提供・利用するサービスと認定し、本願商標は、商品の品質、用途及び役務の質、提供の用に供する物、提供の方法を表示する商標と判断し、審決同様、商標法3条1項3号に該当するとした。当該指定役務等以外については4条1項16号該当とされた。本願商標は略語で、当該業界での使用例もあるとの前提で、正当な判断である。独占不適なものでもある。