2023年3月28日付で改正された不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律(以下「不正競争防止法」とする。)が2023年9月29日付で施行された。その主な改正内容は以下の通り。
1. 善意の先使用者保護規定を新設
従来は商標を先に使用していたとしても、同一・類似の他人の商標が有名になった時点からは、当該商標を使用できなくなる不合理があった。
これに対し改正法は、他人の有名商標と同一・類似の商標を先に使用した者は、不正な目的がない限り、当該商標を使用し続けても不正競争行為に該当しないようにした。
ただし、「有名商標」と「先使用者の商標」が市場に共存すると、消費者は二つの商標が同一販売者の商品だと誤認·混同するおそれがあり、これを防止するため、改正法は有名商標の保有者が先使用者に誤認・混同防止に必要な表示を請求できるようにした。
2. アイデア奪取行為に対する禁止請求権の消滅時効を明文化
不正競争防止法第2条1号ヌ目では、アイデア奪取行為(i.e.、事業提案、入札、公募など取引交渉または取引過程で経済的価値を有する他人の技術的または営業上のアイデアが含まれた情報をその提供目的に違反し、自分または第三者の営業上の利益のために不正に使用したり他人に提供して使用させる行為)を不正競争行為と明示しており、従来は奪取したアイデアの無断使用に対する禁止請求権をいつまで行使できるかについて議論があった。
これに対し改正法は、当該禁止請求権の時効を「行為を認知した日から3年、または不正競争行為が始まった日から10年」と明確に規定した。
3. 不正競争行為の行政調査対象を拡大
改正法は、不正競争行為の行政調査の実効性を高めるため、現場調査対象を書類、帳簿、製品だけでなくデジタルファイルなども含む「資料」に拡大するようにした。
今回の改正法施行で善意の先使用者を効果的に保護し、アイデア取引市場を安定化、活性化させるなどの効果が期待できるものと見られる。