特許、実用新案、商標及びデザイン保護に係る審判請求職権補正制度及び審判参考人制度を新たに導入する改正法案が、2023年8月24日に国会本会議を通過し、本改正法案は、9月14日付で公布、公布後6カ月が経過した日(2024月3月15日)から施行される。審判参考人制度は、このとき特許審判院に係属中の審判事件についても適用される。
本改正法案は、審判での審理の充実を強化し、迅速かつ経済的な審判処理を図るために導入されたもので、主な内容を要約すると以下のとおり。
1. 審判請求職権補正制度
現行の特許法第141条では、審判請求書の軽微かつ明確な欠陥であっても審判長が職権で補正できず、一定の期間を定めて審判請求人が直接補正するようにしている。このため不必要に審判が遅れることがあり、審判請求人が補正しない場合には審判請求が却下されるおそれがある。
これに対して、審判請求における補正すべき事項が軽微かつ明確な場合には、審判長が職権で補正できるように改正する(特許法第141条第1項ただし書及び第4項~第7項新設)。
これにより審判長は、職権補正をしようとする場合、その職権補正事項を請求人に通知しなければならず、請求人は、職権補正事項を受け入れることができなければ、通知を受け取った日から7日以内に職権補正事項に対する意見書を審判長に提出することができ、意見書を提出した場合には、当該職権補正事項は初めからなかったものとみなされる。また、審判長の職権補正が明確に誤っている場合、その職権補正は初めからなかったものとみなす規定も設ける。
上記規定は、実用新案法第33条により上記特許法を準用する方式で実用新案審判にも適用される。また、商標法は第127条第1項ただし書及び第4項~第7項、デザイン保護法は第128条第1項ただし書及び第4項~第7項に特許法と同一に新設され、適用される。
2. 審判参考人制度
現行の特許法は、特許審判において「利害関係人」のみ審判請求又は審判参加ができるように規定しており、審判の過程で、当事者や利害関係人ではない公共団体等の第三者から審判に関する「公衆意見」を聴取できる手続がないという問題がある。
これに対して、審判長は、産業に及ぼす影響等を考慮して事件審理に必要であると認める場合には、公共団体、その他参考人に審判事件に関する意見書を提出させることができるようにし、国家機関および地方自治団体は公益と関連した事項について特許審判院に審判事件に関する意見書を提出できるように改正する(特許法第154条の3新設)。
これにより審判長は、上記のように参考人が意見書を提出した場合、当事者に口頭又は書面による意見陳述の機会を与えなければならない。ただし、一方の当事者にとって有利な参考人が選定されるのを防止するために、参考人の選定及び費用、遵守事項等の参考人意見書提出に必要な事項については産業通商資源部令で定めるようにする。
上記規定は、実用新案法第33条により上記特許法を準用する方式で実用新案審判にも適用される。また、商標法は第141条の2、デザイン保護法は第142条の2に特許法と同一に新設され適用され