2024-01-25

2024年パリオリンピックへカウントダウン: 知財ゲームの進め方 ― Novagraaf

 世界中のスポーツ愛好家が今年7月から8月にかけてパリで開催される2024年オリンピック・パラリンピックの開幕を心待ちにしている中、その舞台裏では複雑な知的財産権保護の駆け引きが繰り広げられている。Frouke Hekkerが解説する。

 2024年オリンピック・パラリンピック競技大会は、世界中の観客を魅了するアスリート精神と世界的団結の華やかな祭典となるに違いない。しかし、その舞台裏では、オリンピックのような大規模なスポーツイベントは、知的財産(IP)保護に関していくつかの複雑な問題に直面している。

 主要なスポーツイベントはブランド露出の戦場となることがあり、知的財産への配慮により公式スポンサーと非公式スポンサー双方の戦略が形づけられる。2024年オリンピックは、世界最大級のイベントであるだけでなく、ブランド・オーナーが200カ国以上で数十億人にリーチできる最高のグローバルマーケティング・プラットフォームでもあり、IPが大会のブランドと関連資産を保護する上で重要な役割を果たすのも不思議ではない。

知的財産と2024年オリンピック
 国際オリンピック委員会(IOC)は、「OLYMPIC GAMES」、「PIERRE DE COUBERTIN」、「OLYMPIC」、「PARALYMPIC」、「PARIS 2024」、「LA 2028」、オリンピックのシンボルである五輪マークなどの商標や、登録・未登録に関わらず多くの意匠、著作権などの権利を守るために包括的な知的財産戦略を採用している。オリンピック憲章に含まれる広範なガイドラインは、「オリンピック資産に関するすべての権利、また、その使用についてのすべての権利は、収益確保の目的であれ、商業的な目的であれ、広告の目的であれ、独占的に IOCに帰属する。IOC はそのような権利の全体または一部について、IOC 理事会の定める条件により、ライセンス使用権を与えることができる」と定めている。

 オフィシャルパートナーは、ワールドワイドパートナー、プレミアムパートナー、オフィシャルパートナー、オフィシャルサポーターの4つのカテゴリーに分類され、コカ・コーラ、ビザ、トヨタなどのブランド大手が含むこれらの企業は、オリンピックのIPを使用し、マーケティング目的で大会を活用する特権を得るために多額の費用を支払っている。

知財とアンブッシュ・マーケティング
 一方、「待ち伏せマーケティング」、「ゲリラマーケティング」、「便乗商法」、個別の選手やチームのスポンサーになる「coattail ambushing」などとも呼ばれる「アンブッシュ・マーケティング」もある。これらは、非公式スポンサーがイベント中に露出を求める戦術だ。

 オリンピック・パラリンピック競技大会における過去の有名なアンブッシュ・マーケティングには以下のようなものがある;

* 1984年ロサンゼルスオリンピック:富士フイルムが公式スポンサーであったが、競合社のコダックがテレビ番組とアメリカ陸上チームのスポンサーとなり、どちらの会社が公式スポンサーなのか混乱を招いた。(興味深いことに、4年後にコダックが公式スポンサーになった時に、富士フイルムはアメリカ水泳チームのスポンサーとなり、リベンジを果たした)
* 1992年バルセロナオリンピック:リーボックが公式スポンサーだったが、バスケットボール選手のマイケル・ジョーダンのスポンサーはナイキだった。メダルセレモニーでジョーダンはリーボックのロゴをアメリカ国旗で隠した
* 1996年アトランタオリンピック:公式スポンサーではないナイキは、会場周辺の看板スペースを大量に買い占めると共に、選手村の隣にナイキビレッジを建設した
* 2000年シドニーオリンピック:「the spirit of Australia(オーストラリアの精神)」というスローガンを使ってカンタス航空が公式スポンサーであったアンセット・オーストラリア航空を出し抜いた。2000年オリンピックのスローガンは「Share the Spirit(精神を分かち合う)」であり、多くの人はカンタス航空が公式スポンサーであると誤解した

 これらの出来事は過去のことだが理由がないわけではない。オリンピック・ムーブメント(IOCのもと、オリンピックの精神に従って、スポーツ通じて平和でよりよい世界の実現をめざす活動)は、民間資金、特に実業界からの資金に全面的に依存しているため、無許可の関連付けを防止し、放送やマーケティング・パートナーの独占権を保護するために、多くの重大な対策を講じてきた。これらには、このようなアンブッシュ・マーケティング行為を防ぐための厳格なIPポリシーも含まれる。

非公式スポンサーでも2024年オリンピックを活用できるか?
 パリオリンピックを公式の場以外で活用したいと考えている企業にとって、いくつかの明確な注意点がある。
* イベント主催者の商標、ロゴ、画像を無断で使用しないこと。その代わり、創造性を発揮し、一般的なスポーツのテーマを戦略的に活用する
* イベントを最大限に活用する機会を逃さないように、知財の専門家に相談し、プロモーションやソーシャルメディアへの投稿がIOCのガイドラインを遵守していることを確認するなど、無許可の商業的関連付けの複雑な状況をうまく乗り切るよう指導してもらう
* 知財の専門家に、パリで適用される可能性のある特別な保護方針、例えば、イベント期間中の広告、販売、流通を規制する会場周辺の立入禁止区域について指導してもらう

知財と2024年オリンピックについてもっと知る
 2024年パリオリンピックへのカウントダウンが進む中、スポーツ、マーケティング、知的財産が交差し、競技場内外でスリリングな光景が繰り広げられることが期待される。ブランド・オーナーは、オリンピック・ムーブメントが定めたルールを尊重しながら、この世界的な舞台を最大限に活用するために、創造性とコンプライアンスのバランスを取りながら、この複雑な状況を注意深く踏破しなければならない。

 Novagraafが3月12日に開催するウェビナー「On your marks: How to face the IP challenges of the 2024 Olympic & Paralympic Games」に登録して、知的財産に関する注意点を確認しよう。

ウェビナーの詳細は こちら
本文は こちら (Countdown to the 2024 Olympics: How to navigate the IP Game)