現行商標法第29条第1、2項には、「(第1項)商標が、次に掲げる識別性を具えていない状況のいずれかに該当する場合、登録を受けることができない。(1)指定した商品又は役務の品質、用途、原料、産地又は関連する特性を描写する説明のみで構成されたもの。(2)指定した商品又は役務の慣用標章又は名称のみで構成されたもの。(3)その他、識別性を具えていない標識のみで構成されたもの。(第2項)前項第 1 号又は第 3 号に該当する場合、出願人が使用し、かつ、取引において出願人の商品又は役務を識別する標識となっているものは、これを適用しない。」と規定されている。「商品又は役務の説明」とは、一般社会通念によると、当該標識が商品又は役務自体の形状、品質、機能、用途又はその他の関連する成分、性質などの特性について直接的かつ明確に描写するものであることを意味し、消費者は、これらの記述的標識を、商品又は役務自体の説明にする可能性があるため、出所を識別する機能を有さない。しかし、当該記述的標識が取引において出願人の商品又は役務の識別標識となり、識別性を取得したことを出願人が立証できる場合、同法第29条第2項の規定により商標登録を認めることができる。
記述的標識が出所識別機能を有するか否かの判断基準について、知的財産及び商業裁判所は111年(西暦2022年)度行商訴字第81號判決において、「商標識別性は、商標と指定商品又は指定役務との関係によって判断されるべきである。商品又は役務が一般的な日常生活の性質に属するものである場合、一般社会における関連消費者の視点から判断すべきである」とし、「消費者にとって、当該標識は、商品・役務自体又はその内容に関する情報を単に伝達するものではなく、商品又は役務の出所を表示する機能を果たすものであれば、識別性があると認められるべきである」と述べている。当該判決は、前述した判断基準に基づき、出願人が「A2-βカゼイン」を含む乳製品に使用したシリーズ要素「A2」、「a2」は、辞書に存在する既存の用語ではなく、関連消費者は、直接当該用語からその意味を知ることができないため、「A2」、「a2」の要素はその商品の出所を表示する標識とすることができるであると判示した。
参加人が欧州食品安全機関(EFSA)局の報告書及び科学雑誌を引用して、係争商標「A2」は「A2-βカゼイン」を含む乳製品の描述又は説明に使用されるものであるため、登録を受けることができないとする主張について、本件判決は、参加人が提出した前述の資料は、酪農家を対象とした専門的なニュースレターであり、一般消費者を対象としたものではないため、台湾の関連消費者は商品を購買する前に、当該資料に容易にアクセスし、「A2牛乳」という用語が「純粋A2型βカゼイン牛乳」と同義であることを知ることは困難であることから、出願人が「A2」、「a2」シリーズ要素を乳製品に使用することは、先天的識別性を有すると判断した。
実務上、出願人が商品又は役務の説明と混在して記述的標識を使用することはよくあるが、それらは単なる「商品又は役務の説明」であり、商標登録を受けることができないのか、それとも、商品又は役務自体の関連情報を伝達することに加えて、商品又は役務の出所を表示する機能を有することから識別性があるのか。また、当該記述的標識が商標登録されたことにより、競合他社が商品の説明文字として関連する記述を使用する権利が不当に制限されることにならないのか。これらについてはよく論争が巻き起こっている。本件判決は、「商品又は役務の説明」の判断は、一般社会における関連消費者の視点に基づくべきであることを明らかにした。
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