オランダのある保険会社は定期的に「Stay ordinary for long enough and one day you will be special(平凡であり続ければいつか特別な存在になれる)」というテレビコマーシャルを流している。
この金言には確かに核心的な真実があるが、残念なことに、本質的な識別力に欠ける商標には当てはまらないことが多い。このような商標は、その企業が何をする会社であるかを正確に表現したものに多くみられる。この明確なメッセージが成功の大きな要因となっていることも多い。しかし、皮肉なことに、いったんこのような商標が広く知られるようになると、保護が難しくなるため商標法上の問題に直面することになる。
例えば、PDFファイルを簡単に分割、圧縮、結合、編集できるウェブサイト「ILOVEPDF」は、確かに、名前から何をするサイトなのかとても分かり易い。しかし、商標としての識別力はあるのだろうか?EUIPO(欧州連合知的財産庁)は、審査でも審判でも識別力があるとは考えなかった。「ILOVEPDF」は、単に「あなたがPDFに愛着がある」ことを表明しているだけであり、商標として識別力があるとは言えない。
もう一つの例は、コンサートのチケットを販売したり、完売したチケットを購入することができるウェブサイト「TICKETSWAP」だ。こちらも「TICKETSWAP」が単に何をするのかを述べているに過ぎないとして、欧州商標として登録を拒絶された。
企業の広範な名声は商標を登録するのに十分な理由であるとも言える。また記述的商標は使用を通じて識別力を獲得することにより商標になり得ることも事実である。しかし、欧州で記述的な商標を出願する企業は、多くの加盟国において使用を通じて識別力を獲得したことを立証する必要がある。
これは大変な作業だが、「ILOVEPDF」と「TICKETSWAP」がこの挑戦に立ち向かえるほど有名になることを願っている。これらは、おそらく「Become famous enough and one day you will be special(十分有名になればいつか特別な存在になれる)」を座右の銘として、商標として機能させることができるかもしれない。