2024-03-13

EUとフランスで異なるベジタリアン向け製品に肉を連想させる名称の扱い - Knijff Trademark Attorneys

 商標法では、商標として出願された特徴的な商品名は誤解を招くものであってはならないと定めている。例えば、ベネルクスの商標局は「CHICKEN TONIGHT」の商標出願を鶏肉に関連しない肉への使用は誤解を招くとして登録を拒絶した。

 商標出願をしていない場合にも問題が生じることがある。ハンバーガー(hamburger)、メルゲーズ・ソーセージ(merguez sausage:マグリブ料理で使用される香辛料の効いたソーセージ)、コルドン・ブルー(cordon bleu:肉を薄く叩きハムとチーズを包んで油で揚げたカツレツ)といった一般的な商品名は、ベジタリアン向けの商品を説明するのに使われることが多いが、これらの一般的な用語についてもルールが定められている。オランダのDe Vegetarische Slager(ベジタリアン食肉)社は、ベジタリアン向け製品の名称を「minced meat(肉の種類が不特定で細かく刻まれた肉)」に変更せざるを得なかった。それ以降、欧州議会はベジタリアンと表示されている限り、ベジタリアン製品に肉を連想させる名称を使用してもよいとの裁定を下している。

 一方、フランス政府はベジタリアン及びヴィーガン向け製品のパッケージから、「ミート(meat)」や「リブ(ribs)」といった肉に関連する用語の使用をすべて禁止する政令を公布した。その他、「エスカロープ(escalope:肉や魚の薄切り)」、「ハム(ham)」、「ヒレ肉(fillet)」、「プライムリブ(prime rib)」などの用語の使用も禁止された。フランスの農業団体と食肉業界はこの措置を長い間待ち望んだもので非常に喜んだ。フランス政府は、ベジタリアン向けの製品に肉を連想させるような用語を付けると消費者を混乱させる虞があるとし、そのような用語は「本物の」肉にのみ使用されるべきとしている。この政令は2020年のフランスの法律に基づくものだが、植物性タンパク質を活用する企業等による業界団体である「プロテイン・フランス(Protéines France)」の訴えにより、国などの行政行為に対する最終審裁判所となる国務院(Council of State)は一時的に禁止を撤回した。プロテイン・フランスは、フランスの法律がEUの食品規則に違反していると主張し、国務院は禁止されている肉製品用語の説明が「曖昧すぎる」と判断した。  

 改正されたフランスの法令では、少量の野菜と共にメルゲーズ・ソーセージ、ベーコン、コルドン・ブルーなどの肉製品に関連する名称で販売することは認められたが、生産者は1年以内に在庫を処分する必要がある。また、禁止用語を使用してベジタリアン向けの製品を販売すると罰金を科されるリスクがある。一方で、他のEU地域では、肉を連想させる名称のベジタリアン向け製品を販売し続けることができる。 

本文は こちら (Oui oui baguette, non non vega)