2024-05-23

中国:商標「拉菲」(Lafite の中国語の当て字)をめぐる不正競争事件 - 北京路浩

最高人民法院が発表した 2023年中国10大知識産権案件から〔最高人民法院(2022)最高法民终 313 号民事判決書〕を紹介する。

【事実の概要】
 シャトー・ラフィット・ロートシルトは、中国登録商標「LAFITE」と「CHATEAU LAFITE ROTHSCHILD」(以下「本件商標」)の権利者であり、本件商標の指定商品は、アルコール飲料である。本件商標に対する長年の使用を経た現在、高い知名度を有し、且つ、アルファベットの「LAFITE」とその中国語当て字の「拉菲」の間に、固定された関連性も持つようになった。南京金色希望酒業有限公司は、2005年4月1日に「拉菲庄园」の商標を登録出願し、指定商品はぶどう酒である。その後、南京金色希望酒業有限公司は、ぶどう酒の生産・輸入と販売の際に、「拉菲庄园」や「LAFEI MANOR」などの標章を使用した上、公式サイトや引取書類においても宣伝した。2016年12月23日、最高人民法院の判決により、商標「拉菲庄园」の無効が確定された。その後、シャトー・ラフィット・ロートシルトは、南京金色希望酒業有限公司などの計7軒の会社に対し、訴訟を提起した。第一審法院の判決によれば、被告側の行為は商標権侵害行為と不正競争行為に該当し、侵害の停止が命じられた上、懲罰的賠償の適用も認めた。第二審では、最高人民法院知識産権法廷の判決によれば、原審被告側は、原審原告側の商標を便乗する悪意はあり、「拉菲庄园」や「LAFEI MANOR」に対する使用は、商標権侵害に該当する。南京金色希望酒業有限公司は、侵害の悪意が明らかであり、情状が厳重であるため、懲罰的賠償を適用可能である。従って法廷は南京金色希望酒業有限公司に、計7917 万人民元の賠償を命じた。

【典型的意義】
 本件判決によれば、便乗の意図をもつ商標出願人による商標の使用は、法的な保護を受けない。本件判決は、市場の参加者達に信義則を遵守することを促す効果がある。また、懲罰的賠償が適用され高額な賠償金が認められることは、便乗・ただ乗り行為を厳粛に対処するという人民法院の決意も表明した。

本文は こちら (路浩知財ニュースレター)